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バーゲン正常化より納入掛け率正常化
 バーゲンの後ろ倒しに批判的な意見を書くと、『バーゲン正常化のチャレンジに水を差すのはけしからん!』というお叱りのツィートが帰って来る。そもそもバーゲン後ろ倒しが出て来た背景は、夏物プロパー販売期間の短さによる歩留まり率の低さが収益を圧迫しているという業界の課題であった。しかし、バーゲンを後ろ倒ししてプロパー販売期間を長くすると歩留まり率は改善されるのだろうか。もっと本質的な問題を棚上げした主張のように思われる。
 そもそも春夏物の展開は12月のクルーズ(日本では例外的だが)に始まって冬バーゲン明けの春物投入、3月の連休前の初夏物投入、そしてGW前の夏物投入と流れるが、販売期間を確保して消化率を高めようと毎年、投入が早くなり、かつては5月末に投入されていた晩夏物がセレクトショップなどではGW前に立ち上がるようになった。そんな実情下ではGW前に投入した夏物をプロパーで引っ張るのは6月半ばが限界で、バーゲンを遅らせてもセール待ちに陥るだけだ。ましてや、GW前に投入した夏物を焼き直したような値頃品でプロパーを引っ張るのは無理が在り過ぎる。
夏のプロパー販売期間を後ろに伸ばすには、GW前投入の夏物とはスタイリングも素材構成もカラーリングもまったく異質な晩夏リゾート企画(通気性の高い晩夏色綿麻系意匠素材軸のゆるいスタイリング)を投入すべきではないのか。
 逆に、欧米式にプレフォールを早期に立ち上げるなら、夏バーゲンを前倒して早めに切り上げる法が合理的だ。どちらを選択するかは個別ブランド/館の営業方針だが、実際のシーズンMD展開と一致しないと売上も収益も望めない。
 歩留まり率を改善するもっと本質的な課題はマークアップ率の正常化だ。かつて消化仕入れの百貨店NBの生産原価率は30%強と言われたが、92年以降の売上低下局面で百貨店側が収益を確保せんと納入掛け率の引き下げを要求し、98年頃までにほぼ8ポイントも切り下げられた。結果、百貨店NBの生産原価率もほぼ8ポイント下がって22%前後(今日では20%以下)となり、90年代初期まではほとんど日本製だった百貨店NBはほとんど中国製になって価格に対するお値打ち感は大きく損なわれ、顧客の百貨店離れを加速する事になった。バーゲン正常化を言うなら、まず納入掛け率を92年以前の水準に戻して原価率(お値打ち感)の正常化を図るべきではないか。
 原価率と歩留まり率は統計的に極めて相関性が強く、原価率が高いほど(価格設定が誠実なほど)プロパー消化率が高くなって歩留まり率も高くなる。ちなみに、原価率38%のユニクロの歩留まり率はほぼ75%と推計されるのに対し、原価率63.2%のしまむらの歩留まりは独自の自社ルート便活用絶対単品店間移動体制も寄与して93.2%(ロス率はわずか6.8%)と極めて高い。原価率が20%以下の百貨店NBの歩留まり率は恐らく65%を割っているのではなかろうか。
 もし、百貨店NBの納入掛け率が8ポイント切り上げられて原価率も同程度改善されれば、プロパー消化率も歩留まり率も格段に向上するはずだ。歩留まり率改善にはバーゲン正常化より納入掛け率の正常化が先決なのではないか。
 2012/07/24 10:30  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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