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「ものづくり白書」の衝撃
 6月5日に経済産業省が刊行した「ものづくり白書2012年版」はまさしく衝撃的な内容だった。世界に冠たる日本の製造業の現状を検証して方向性を提唱する「ものづくり白書」が、先進国と新興国に挟み撃ちされて衰退する日本の製造業の‘敗戦’を認め、焼け跡からの再生を提言するという‘衝撃的’な論展だったからだ。
 ものづくりのデジタル化/モジュール化が進んで我が国製造業の技術開発に基づく垂直統合生産の優位性が崩れ、企画・開発に特化して付加価値を創造し生産は新興国にアウトソーシングする先進国、生産設備への巨額資本投下と技術のキャッチアップで先進国に劣らない製品を安価で大量供給する新興国に挟撃され、日本の製造業はマーケットシェアも収益力も失って行った。ITエレクトロニクス分野の勝者はアップルとIBM、その対極にある台湾中国の巨大EMSであり、自動車分野の勝者はVWグループだと総括する内容はまさしく‘敗戦宣言’と言うしかない。そんな事はもはや明々白々だが、経済産業省が公式な白書で前面降伏したという衝撃はまさしくボツダム宣言受諾に匹敵するインパクトがあった。
 聡明な日本の製造業は既に白書で指摘されたようなスマイルカーブの収益ポジションへ移動を急いでおり、高付加価値な素材や基幹部品、機能性とバリューで独占的なシェアと高収益を実現している企業も少なくない。身近な所では繊維の東レ、自転車部品のシマノ、ランジェリーのワコール、化粧品の資生堂などがその典型だが、アパレル業界では誰がそんな戦略を描いているだろうか。ビジネスモデルの基本はスマイルカーブの何処で収益を確保するかだが、日本ブランドの海外進出ではそれがまったく見えていない。
 業界では中国、アセアンへの進出が加速しているが、アウトソーシングでマーケットインするデフレ型ビジネスモデルのお手頃ブランドがインフレ著しい新興国のブランディング競争に勝ち残るとは到底思えない。アップルのように突出した企画・開発力とブランディングが可能とする水平分業、あるいはルイ・ヴィトンのように完璧な自社企画・自社生産とブランディングが実現する高付加価値、あるいは・・・・・、どれも見当たらないのが実情だ。
 アジアで成功するジャパンブランドはラグジュアリーかクリエイションに徹した高付加価値ブランドかパーツ性と機能性に徹したバリューブランドだけだと思う。それも日本からの出店感覚ではなく企画・開発から販売・アフターサービスまで現地に根ざした別途の事業であるべきだ。そんな事を考えながら、今週28日(木)に開催するSPAC研究会『アジア市場の最新動向と事業展開総研究』の詰めを急いでいる。
 2012/06/25 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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