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ファストからスローへ20年振りの神風
 最近のアパレル企業決算を見ていると、何となくだがファストからスローへ勢いが移っているのが実感される。ファストとかスローとか言うのは商品開発速度の事で、アウトソーシングを活用して短期間で商品開発する企業の勢いが陰る一方、じっくりと時間をかけて自社開発する企業の勢いが復活しつつ在るようだ。それは3.11直後から目立ち始めていたが、ほぼ一年を経て企業決算に顕著に現れるようになった。
 それを『水平分業から垂直統合へ』と言ってしまうと家電業界とは流れが逆になってしまうし、『デフレ局面に在る業界では水平分業、インフレ局面にある業界では垂直統合』とも言い切れないが、今のアパレル業界は20年振りにインフレに転じ、20年間続いたアウトソーシングとファスト化の流れが逆流し始めているように見える。ではデフレ局面が続いたこれまでの20年間は水平分業志向のアパレル企業が伸びたかと言うと、必ずしもそうではない。アパレル専門店企業の売上ランキングを見る限り、むしろデフレ局面下でも一貫して垂直統合志向のアパレル企業が伸びて来たとしか見えないのだ。
 80年代の売上上位企業はファストな水平分業調達に依存するナショナルチェーンが占めていたが、90年代以降はスローな垂直統合調達のロードサイド紳士服チェーンが急速に台頭し、00年代に入っては名前とは逆にスローな垂直統合調達に徹するファーストリテイリング(ユニクロ)が首位を占めるようになった。加えて、近年は垂直統合志向の強いセレクトSPA企業がランキング上位に加わるようになり、ファストな水平分業調達企業はポイント一社だけになってしまった。そのポイントにしても、ファストからスローへ調達体制の転換を急いでおり、国内大手アパレルチェーンでファストな水平分業を志向する企業は皆無になった感がある(中小中堅チェーンでは未だ多いが、それゆえビッグになり切れないという見方も出来る)。
 もちろん、グローバルに見ればファストな水平分業を志向するH&M社やフォーエバー21社が依然として伸びているが、日本国内に限ればその勢いは明らかに陰っている(「ZARA」などを展開するINDITEX社は垂直統合志向が強く、ファストファッションとは体質が異なる)。一時はファストに流れた国内アパレル市場だが、長期的なスパンで見れば、その本質はスローな垂直統合調達による完成度を志向し続けて来たのではないか。生産の空洞化とともに退化して行ったと見える日本のアパレル市場だが、そんなに悲観する事もないのかも知れない。アパレル業界には20年振りの神風が吹き始め、「誰でもSPA時代」が終焉して玄人が再評価される時代に回帰しつつあるようだ。
 2012/05/30 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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