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私の履歴書2
 山間の小さな城下町で青春に突入した私は当時の例外に漏れず、カレッジフォークに始まってエレキギターに嵌り、放課後は誰彼ともなく集まって音楽室でハモっていた。当時は岡林信康が神様で、一時はランチャーズやベンチャーズにも熱を上げていた。高校生活の大団円は二年の文化祭におけるエレキ大合戦で、私のチームはジャガーズの『君に会いたい』を熱演したと記憶している。
 VANかJUNしかなかった小さな街だったからメンズファッションの目覚めは遅かったが、幼稚園の時からチーフバイヤーたる母に連れられて神戸や京都の展示会はしっかり覗いていたから、婦人服のトレンドは子供心にも解っていたのだろう。周囲の女性達の洗練度だけはしっかりと見極めていたようだ。
 福澤諭吉が創設したという事以外はよく知らない私立大学に入って始めて故郷を離れ、東京という大都会に出たものの右も左も判らず、ほとんどパニック状態の半年を過ごした後、バリケードで熱く語る先輩達に引き込まれてヘルメット姿の日々を過ごす事に。それも束の間、バリケードが消えて学園に日常が戻るとクラスは塾高あがりの遊び慣れた坊ちゃんたちと大学から入った要領の悪い般ピー学生にくっきりと色分けされ、アカデミックと言うかリアリティのない講義にも興味が持てず、音楽とファッションに嵌って行った。
 慶応と言うとランチャーズなのかも知れないが、高校時代にコーラス部にいた私はPPMの系譜から流れるカレッジフォーク、とりわけ美しかった万里村れい先輩に惹かれてタイムセラーズのコピーなんかに夢中になった後、東京者の同級生に誘われてローリングストーンズ紛いのロックバンドに参加する事になる。このロックバンドで私はエレキベースを担当し、当時の流行だったゴールデンカップス流のランニングベース演奏に嵌った。趣味の学生バンドとは言えいっぱしの格好は付けていたから結構、パーティなどのお座敷もかかり、それなりに楽しんだと記憶している。
 そんな学生気分もいつまでもという訳にいかず、三年生の秋頃からは進路を真剣に考えるようになる。先輩達の会社を訪ねてみたり、面白そうな会社を覗いてみたりする一方、レディスファッションに強く惹かれるようになり、新宿のデリカ(現在の「セシルマクビー」)で販売のバイトに熱を入れたりもした。その当時、一番惹かれたのが銀座並木通りにあった「ベル・ブードア」という鈴屋の開発店舗で、総レースのブラウスにホットパンツ、編みタイツにロンドンブーツというスィンギングロンドン風にお洒落して銀ブラついでによく覗いたものだ。
 当時、訪問した会社に創業間もないビギがあった。表参道のブティックで大楠さんと武さん(菊池武雄)に面接されたのを記憶しているが、もしかしたらビギの四人目か五人目の創業スタッフになっていたのかも知れない。
 結局は、慶応の百貨店研究会の先輩であった鈴木義雄氏の引きで鈴屋に入り、憧れの「ベル・ブードア」の売場に立つ事になる。ここで最初に配属されたパンツ売場でVMDと接客に目覚め、陳列順を替えては売れ行きを検証し、様々な接客プロセスを試していた。そんな中、毎週のように行李を担いで出入りしていたコムデギャルソンの川久保玲さんなど新進気鋭のクリエイター達に接し、DCブーム前夜の鳴動にも染まって行った。その当時の直属上司が現ファィブフォックス代表取締役の上田稔夫氏であったのも何かの因縁であろう。
※また不定期に掲載します。
 2012/03/23 09:10  この記事のURL  /  コメント(1)

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コメント

まさに、歴史の目撃者。
ファッションが特別なものだったあの頃、情報は極端に少なかった。
次回、私の履歴書はDC全盛からイタカジ前夜編でおねがいします。
Posted by:釣 喜代志  at 2012年03月23日(金) 12:55


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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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