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進化と退化は裏腹
 ユニクロやしまむらが跋扈する文明の退化はもはや否定しようもないが、失われた文明の輝きをささやかながらも復興したいという憶いも捨て難い。嘆かわしい現実の正視と失われた文明へのオマージュの間を揺れ動く論展は時として矛盾を指摘されるかも知れないが、それだけ失われたものたちへの憶いが深いのだ。
 建築的様式美に輝いた店舗デザインや美術的に洗練されたVMDは見る者と創る者、双方の退化で再現さえ難しくなり(経済的要因も否定出来ないが)、四季折々を彩る季節商品もQR軸のMDが蔓延するとともに失われて行った。職人技が冴えた手縫いのクロージングやオートクチュールも、もはや博物館行き寸前と言うしかない。
 文明は進化するもののように思われがちだが、近代を振り返れば進化と退化は裏腹な関係だと理解される。産業革命以降の貴族階級の没落は美術工芸品を衰退させ、代わって台頭した中産階級(ブルジョワジー)と労働者階級(プロレタリアート)に向けて大量生産のシンプルな生活用品が普及して行ったが、アールヌーボー、アールデコ、バウハウス、ポストモダンと幾度も揺り返しながらも、結局は美術性装飾性が後退して量産に向いたシンプルなデザインへと収斂して行った。産業や技術が進化すればするほどデザインはシンプルになり、大衆の美術的感性もシンプルになっていく。河村錠一郎氏の名著「世紀末の美学」(絶版ですが当社に在庫があります)をお読みになれば、産業革命以降の社会変化がどう美意識を変えて行ったか如実に理解出来ると思う。
 私は工芸的美術性や装飾性が進化で工業的単純化が退化だ、などと言うつもりはさらさらない。サムスンの薄型TVやIKEAの家具など工業的単純化の最たるものだが、下手に装飾されたデザインより遥かに洗練されている。デザイン史を振り返っても、工業的単純化を追求したバウハウスやコルビジェの機能美は今日もなお美しい。機能的必然性がミニマルに収斂されているからだ。
 そんな機能美という視点でユニクロやしまむらを見ると、どう好意的に見ても美しいとは言い難い。ユニクロには機能性とスタンダードな品質感はあっても、それらをミニマルに洗練させた機能美が欠けている。それは商品だけでなく、店舗環境やVMDも同様だ。しまむらに至ってはただ安くて手軽なだけで、機能美どころか清潔感さえ欠落している。このような洗練を欠くブランドを嬉々として受け入れる大衆の美意識は、やはり退化していると言わざるを得ない。貧困ビジネス化したしまむらはどうしようもないにしても、グローバルブランドを目指すユニクロには世界に通用するミニマルな機能美に目醒めて欲しい。ユニクロが目指すべきデザイン戦略はクール・ジャパンではなくグローバル・ミニマリズムではないのか。
 2010/12/28 09:29  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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