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よい会社とわるい会社
 横田増生さんの「ユニクロ潜入一年」で赤裸々に暴かれたようにユニクロの店舗運営とマネジメントには前世紀のチェーンストア神話が色濃く残り、今日のワーク&ライフバランス感覚とは隔世の感があって働く者にとって‘よい会社’かどうか疑わしいが、ここ四半世紀のアパレル業界の凋落の中にあって奇跡的急成長を遂げ世界第3位のSPA企業にまで昇り詰めたのだからファーストリテイリングが資本家投資家にとって‘よい会社’だった事は疑う余地もない。
 働く者にとって‘よい会社’が資本家投資家にとって‘よい会社’とは限らない。むしろ相反するのが資本主義の現実なのかも知れない。06年にファーストリテイリングに買収され10年に消滅したキャビンなど働く者に暖かい‘よい会社’だったが、旧キャビン社員の大半が柳井マネジメント下で疲弊し会社を去るに至った事はキャビンが‘働く者に緩い会社’だったというシビアな見方も出来よう。資本家と労働者の利害は相反し経営者は労働者にシビアな競争を強いて生産性を追求するのが資本主義の本質なのだろうが、そんな身も蓋もない利害関係を剥き出しにするマネジメントは‘仁政’とも好ましいガバナンスとも言い難い。今更ながら平明 暘氏の人柄が偲ばれる。
 ファーストリテイリングとは比較すべくもないが、今日もそんな成功を夢見て急成長しているアパレルチェーンがない訳ではない。様々な問題を指摘されながらも急成長しているS社やD社についても、はたして‘よい会社’なのだろうかと疑念を投げかけたくなる。
 両者に共通しているのはタイムセールの乱発や意図的で高頻度な売価変更から疑われる‘偽装二重価格商法’で、もとより値引きして販売する事を前提に極端な低原価率で調達している。それは顧客にとっては‘有利誤認’を誘う景品表示法違反、納入業社にとっては優越的地位を濫用して収奪する下請法違反が強く疑われるが、それでも顧客が購入し納入業社が取引して成長が続いているという現実には驚くほかはない。両社は法的には限りなくグレーな‘わるい会社’でも資本家投資家にとっては利回りの‘よい会社’であり、『騙した者が勝ち』というマネーゲームの暗黒面を実感させる。天網恢々とは言うが、消費者庁や公取委はいったい何をしているのだろうか。
 モルクリ(店舗とネット)入り乱れて生き馬の目を抜く今日のビジネス社会で‘公正’や‘仁政’を説くのもアナクロなのだろうが、働く者にも顧客にも公正で暖かい‘人徳’ある経営者に成功してもらいたいと願うのは半世紀以上もこの業界の栄枯盛衰を見てきた者の人情だ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/11/17 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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