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「秩禄処分」を迫られる百貨店
 昨年三月の‘密室クーデター’を経て新経営陣の下、ひたすらリストラに邁進するかに見える三越伊勢丹だが、不採算事業を切り捨てるばかりで収益体質の癌たる労働貴族支配にはほとんどメスが入っていない。
 朝日新聞の記事によると直近決算期における三越伊勢丹の売上対比人件費率は9.4%と高島屋の9.1%、Jフロントリテイリングの6.1%などより高止まりしており(すべて連結決算)、首都圏で百貨店事業にかかわる約四千人の社員の半数が管理職だという。道理で店内で‘黒服’ばかりが目立つ訳だ。販売や店内物流など現場労働を担わない‘労働貴族’が半分を占めるという労務体質では、幾ら納入業者から法外な‘歩率’を収奪しても採算が採れる訳が無い。
 百貨店が‘労働貴族’支配を脱せないのは過去の‘ブルジョワ革命’を引き摺っているからで、資本家による専制支配でもプロレタリアートによる人民支配でもない何方付かずのガバナンス空白域に陥っている。松坂屋は伊藤家、高島屋は飯田家、伊勢丹は小菅家という創業家から銀行や労働組合の意向で経営権が移ったという‘ブルジョワ革命’を経て今日に至っており、‘管理職’という肥大した労働貴族層を粛正出来ないまま高コスト体質を引き摺るという、旧士族に対する秩禄補償を引き摺った明治初期維新政府のごとき労務負債体質に陥っている。
 48〜50才部長クラスの退職金を5000万円も上積みして7000万円も支給しても早期退職を促したいという三越伊勢丹の形振り構わぬ肩叩きは株主代表訴訟の格好の標的となりかねないが、上層士族に多額の公債を支給して秩禄補償を打ち切った明治政府の「秩禄処分」に重なって見える。些細な補償で打ち切られて困窮した下級士族層との格差も共通しているのは遺憾に耐えないが、‘労働貴族’に上乗せ支給される巨額の費用はいったい誰の金だと思っているのだろうか。
 高コスト立地に巨大店舗を抱えて在庫も物流も掌握しないまま‘商物一体’で大量販売するという極めて非効率なビジネスモデルもともかく、現場の労働を担わない管理職層を社員の半数近くも抱えるという徳川幕藩体制の士族支配(家族を含めて人口の5%)より酷い非労働支配層負担をどうにかしない限り、百貨店は過去の資産を食い潰して滅んで行くしかない。百貨店はかつての‘ブルジョワ革命’の残滓を一掃する「秩禄処分」という第二次革命を迫られているのだ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/11/09 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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