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誰でもショールームストア時代が来る
 丸井錦糸町店のショールーム販売売場「フィットスタジオ」を偵察して来たが、その第一印象は『販売員が楽チンそう!』に尽きる。何せ全デザインの色柄と16サイズを組み合わせたサンプル陳列だけだから、サイズ探しにストックに入る必要もないし、売れる度に補充する必要もない。新作が入る時だけは陳列作業が発生するのだろうが、営業時間中の‘店内物流作業’は皆無に近い。実際、私が見ていた暫くの間、三人の販売員は接客する以外は和かに打ち合わせしながら待機するのみだった。
 お客様も慣れているのか試着と備え付けのタブレット操作をマイペースで進め、販売員はそのサポートとアドバイスだけでスムースに販売が完了してしまう。途中でサイズ探しにストックに消えてお客様を待たせる事もなく、決済もタブレットだからレジ精算も包装も必要なく、手間も時間もかからない。在庫を積み上げない分、試着のスツールも余裕をもって置けるしウォーキングスペースも確保出来る。店受け取りを希望される顧客のお渡し商品があるのでストックスペースはゼロにはならないが一畳程度で、それも店舗物流ではなくECの宅配物流によるものだ。
 顧客にとっては嵩張る靴を持ち帰らなくても済むし、サイズ探しで待たされる事もない。販売員にとっても品出し・棚入れ・補充・サイズ探しといった店内物流作業の大半が不要になって接客に集中できるから、楽チンなのに生産性が上がる。「蟹工船」とは天と地のこんなに美味しい仕組みなのに何でABCマートもユニクロも導入しないのだろうか。
 この「EC活用品揃え拡張型サンプルショールーム」という仕組みは小型店で大型店の品揃えを実現している青山商事の「デジタルラボ」もほとんど同様で(タブレット操作が販売員という点が異なる)、自社運営ECを手がけている企業なら誰でも無理なく実現可能だが、ファストファッション店には向かない。継続的に販売する商品を店舗を経ずしてDCから宅配する‘販物分離’の仕組みだからだ。そのメリットは以下の1)〜3)だけでも‘革命的’だが、実は超が三つ付くぐらい‘革命的’な第4のメリットがあるのだ。
1)ECフロントで品揃えを拡張できるサンプル陳列なのでスペースを要さず綺麗に陳列出来、接客空間もゆったり取れてお客様を待たせず、売上対比の家賃負担も断然軽くなる。
2)EC物流による宅配と店受け取りのため、販売する在庫を店舗に物流する必要がなく、搬入・棚入れ・棚整理・在庫探しする店内物流労働もほぼ不要で、売場はもちろん荷受やストックのスペースも極端に圧縮できる。
3)販売員を店内物流から解放して接客に集中させられるから労働環境が飛躍的に改善され、生産性も待遇も画期的に高まって人手不足から解放される。
4)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 継続的に展開する商品で店内物流負担や値引きロスが大きい企業にとっては決定的な突破口となる‘革命’なのだが、大きな店に在庫を積み上げてインパクトを訴求したい、行列や繁忙を演出したい、社員を汗だくで頑張らせたい、などと思う経営者には向かない。要はそのメリットを実感するリテラシーが経営者にあるかどうかではないか。
 11月9日に開催する『バイヤー/MD/DB育成マーチャンダイジング技術革新ゼミ』、11月16日に開催する『ショールームストア開発ストアプランゼミ』ではその仕組みとメリットを余すところなく解説したい。加えて11月29日に開催するSPAC月例会『ショールームストアとAI接客総研究』では内外の最新事例を検証するとともに、青山商事の石矢部長さんとオーマイグラスの清川社長さんにショールームストアの運営ノウハウを語っていただく。
 ショールームストアはもはやEC事業者の専売特許でも実験的ビジネスモデルでもない。店舗運営の在庫とロス、運営コストと労務管理に苦しむすべての小売業者を救済する‘最終兵器’に他ならない。今日のEC同様にメジャー化して‘誰でもショールームストア時代’が到来するのも時間の問題ではないか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/11/06 09:05  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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