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目の前しか見えていない
 今のギョーカイはECやAIに夢中だが、ちょっと前まではSC出店や駅ビル出店を競っていたのを忘れたわけではあるまい。過剰供給とオーバーストアにECへの売上流出が加わって店舗販売の水位はジリジリと下がっており、闇雲にEC依存を高めれば損益ラインを割り込む店舗が広がって退店ラッシュの加速が避けられない。
 「品揃えの狭さ」「情報の限定」「労働の負担」「時間の負担」というECに較べての店舗の負い目を補う本物のオムニチャネル体制を確立しない限り、イニシャルコストもランニングコストもECより格段に嵩む店舗はどんどん‘負の資産’に転じて企業の収益力を奪ってしまう。普通借家契約だった前世紀ならともかく、定期借家契約店舗が大半(テナント出店のほぼ97%)を占める今日では店舗の資産価値は‘二束三文’で、退店のペナルティを徴収されれば持ち出しになりかねず、赤字店舗は早々に処分するしかない。
 店舗の撤収は想像以上の出血を伴う。退店には店舗施設の減損処理と現状復帰費用はもちろん、定期借家契約で期間満了以前に撤退する場合は「敷金の全額没収」「残存期間の最低保証家賃全額徴収」など‘泣きっ面に蜂’の容赦ないペナルティが課せられるケースもある。駅ビルやファッションビルで6割弱、郊外SCでは9割以上で課せられる期間内退店のペナルティを甘く見ては行けない。ラルフローレンは17年4月にニューヨーク五番街の旗艦店を閉店するのに3億7000万ドル(412億円)を要したが、そのうち300億円超が13年に締結した15年間の定期借家契約の残存期間家賃ペナルティだったと推計される。
 闇雲なEC拡大が店舗を追い詰めて企業総体の収益力を損なうという最悪のシナリオが杞憂でない事は米国のアパレルチェーンやデパートチェーンの事例が次々と証明しているのに、我らギョーカイは未だEC拡大の薔薇色の夢から醒めないのか、それともカニバリ覚悟でリスクを先送りしているのだろうか。店舗網を持たないEC事業者はともかく、既に店舗網を布陣してしまったチェーン事業者は店舗の負資産化という財務リスクを抱えている事を努々忘れてはなるまい。
 07〜08年、13〜14年の出店ラッシュの時も『どうして売れない店を増やすの?』(資産価値もないのに!)と幾度も警鐘をならしたがギョーカイは耳を貸さず昨年来の退店ラッシュという結末を招いたが、闇雲なEC拡大はそれ以上に悲劇的な結末を招くかも知れない。時々のトレンドに右往左往して目の前しか見ないミーハーな体質が経営の根幹を脅かしかねないのだ。
 店舗販売の負い目を補ってECに負けない顧客利便と運営効率を実現するには何を為すべきか、11月9日開催の『バイヤー/MD/DB育成マーチャンダイジング技術革新ゼミ』、11月16日開催の『ブランディングVMD/ショールームストア開発ストアプランゼミ』、11月29日開催のSPAC月例会『ショールームストアとAI接客システム総研究』で私の話を聞いて欲しい。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/10/23 09:17  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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