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EC偏重とAI依存に潜む罠
 過剰供給と同質化、ECへの売上流出で低迷するアパレルの店舗販売だが、在庫のECシフトと店舗運営の劣化がそれに輪をかけている。在庫のECシフトが進む理由は以下の二点だ。
1)全国を一ヶ所〜数カ所のDCでカバー出来るECと多店舗に在庫が分散して偏在が避けられない店舗販売では消化効率に大差があり、在庫消化の全体最適を求めれば店舗よりECに在庫が向けられてしまう。
2)低迷する店舗販売より伸びるECに商品供給を優先するのは当然で、EC向け在庫と店舗向け在庫を一元的に管理・運用すればするほど店舗に売れ筋が回らなくなって店舗販売の低迷が深まってしまう。
 店舗運営を劣化させているのはAIに依存して売場を見失っていくセントラルDB(CMI)、品揃えへの関与を断たれて在庫運用のスキルを失っていく店舗の両面ではないか。
 CMIではPOSデータに基づいてコンピュータがアルゴリズムで配分や補給、値引きや店間移動を自動指示するAIが加速度的に進化しており、高精度化・効率化の半面で売場の実態や商品の特性を見ない弊害も指摘される。とりわけ顕著なのが売価変更のタイミングで、消化進行から自動判断してしまうと売場での賞味期限と乖離しかねないし、陳列位置の変更や出前組み替えなどの再編集でプロパー消化する機会も損なってしまう。実際、コーディネイトや編集訴求次第でまだまだプロパーで売れる商品が機械的に値引きされているのを目にする事が多くなった。
 本部がCMIのAI依存を深めるほど店舗は品揃えへの関与を断たれてフェイシング管理や再編集など在庫運用のスキルを失っていく。POSデータはあくまで結果に過ぎず、出前再編など現場の再編集スキルで稼げる余地が見えるはずもなく、結果の数値だけ追えば縮小スパイラルに陥りかねない。何より恐いのは現場の運用スキルが退化して店舗運営の基礎体力が損なわれる事だ。それがまたECシフトを加速すれば店舗販売は崩壊してしまう。
 このギョーカイは時々のブームに右往左往して長期的な戦略を見失い収益構造を損なうという‘水商売体質’を否めないが、EC偏重とAI依存もその例に漏れないのかも知れない。ECとAIにばかり注力して売場を見なくなれば現場の運用スキルと達成意欲を損ない、店舗販売の衰退を加速して収益構造を一段と毀損してしまう。手遅れになる前に、店舗運営とりわけ在庫運用の手順と再編集スキルの確立を急ぐべきだ。幼稚園のお遊戯みたいなVMDでお茶を濁している場合ではないだろう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/10/12 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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