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百貨店の編集平場は復活するの?
 高島屋は9月20日から婦人用スーツを一ヶ所に集めた自主編集平場「スーツクローゼット」を新宿店と横浜店に開設するそうだ。30〜40代のワーキングウーマンを対象に、大手アパレルの11ブランドと高島屋がデザイナーとコラボしたオリジナルを揃え、オーダーメイドにも対応する。自主編集と言っても大手アパレルのブランド商品は元売場から切り出した消化仕入れで、ブランド別のラックで展開される。
 高島屋はハイクオリティブランドのセレクト編集平場「サロンルシック セレクト」をレディス5店舗、メンズ4店舗、ミドル〜マチュアを対象とした単品編集平場「シーズンスタイルラボ」を7店舗で展開するなど、ブランド売場偏重を是正すべく単品平場の構築を進めているが、今回の「スーツクローゼット」もその一環に位置付けられよう。
 百貨店各社は『自主MD強化による専門店化か定期借家テナント導入による商業施設デベ化か』という二者択一の間を試行錯誤して来たようにも見えるが、収益性を見れば商業施設デベ化に振って経費率を圧縮した大丸松坂屋や阪急阪神百貨店が専門店化へ向かって経費率が肥大した三越伊勢丹を引き離すという結果に見える。事はそれほど単純ではないから、各社とも個店ベースの採算改善を狙って両方向を使い分けているのが現実だ。高島屋とてユニクロやニトリを導入する一方で自主編集の単品平場を拡充するという二正面作戦を進めている。
 さて「自主売場」と言っても、1)消化仕入れ商品を自前社員で販売する「自主運営売場」、2)買取商品も含めて自前社員で運営する「自主仕入れ運営売場」、3)オリジナル開発商品を軸に買取のブランド商品も加えて自前社員で運営する「セレクトSPA売場」や「SPA売場」(オリジナル商品のみ)に分けられるだろう。高島屋は1)主体に一部2)に踏み込むというスタンスだが、三越伊勢丹は一部3)まで踏み込むチャレンジが採算性を圧迫したとされる。
 細切れで販売人件費負担の重いブランド別売場より大きく括った統一環境平場での自主運営の方が販売人件費負担が格段に軽く、「自主運営売場」は百貨店による集合販売代行という性格が強い。在庫リスクのない消化仕入れのまま販売人件費の節約分が百貨店の収益に回るのだから、手軽で収益改善効果も確実だ。「自主仕入れ運営売場」は買い取っても在庫ロスの負担が大きく消化仕入れより採算が悪化するケースがほとんどだから、大概は挫折してしまう。粗利益と運営経費を計算すれば誰でも解るから、無謀な挑戦に近い。
 ならば仕入れより値入れが格段に厚い「SPA売場」や「セレクトSPA売場」まで踏み込むというのは解らないでもないが、ロットが小さいと開発コスト負担が重く割高になってしまうし、少数の店舗で大ロット調達すれば売れ残りは必定だ。ゆえに大手アパレル依存の開発になって在庫負担から立ち消えになるケースが多かった。三越伊勢丹の場合はデザインチームと契約して工場直の開発に踏み込んだのだから在庫を負担させる先もなく、行き詰まるのは必定だった。
 セントラルバイイングと多店舗ディストリビューションの仕組みもスキルも持たない我が国の百貨店が出来るのは「自主運営売場」までで、それ以上の踏み込みは外部とのリスク分担なくしては困難だ。ブランド偏重に陥って同質化し買い難くなった売場をテイスト/アイテム軸で再構築して単品平場を復活させ、大きく括った統一環境平場の自主運営で収益性を高める事が優先されるべきではないか。その次のステップはセントラルバイイングと多店舗ディストリビューション、とりわけ再編集と店間移動のスキルを磨いてからにすべきであろう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/09/14 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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