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近くて小さい心地よいSC
 米国ではECの急拡大で小売店舗の閉店ラッシュが広がり、遠からず全米に4万6800ヶ所もあるSCのうち三割方は消えるとまで囁かれている。米国では既にSCデベの経営にも翳りが見られるが(16年の大手デベ5社合計営業利益は6.1%減少)、我が国ではテナントチェーンの苦境とは裏腹に大手商業施設デベは未だ増収増益で、SC開発も途絶える気配はない。そんな中でも不思議なのが未だ広域大型SCが志向されている事だ。
 人口が増加し都市圏が膨張していた前世紀ならともかく、少子高齢化が進行してコンパクトシティが志向されECが急拡大を続ける今日、都心ターミナルを除けば商業施設に求められる役割は‘広域大型’ではあるまい。むしろ生活圏に密着した‘近くて小さい心地よいSC’ではないのか。
 アパレル販売の苦境が深まって日米とも閉店ラッシュが広がり、替わりに日本では食物販や飲食サービス、化粧品や美容サービス、プチプラ雑貨や日用サービスのテナントが急増しているが、これらは皆、生活圏で消費するカテゴリー、すなわち‘最寄品’‘最寄サービス’だ。SCの‘最寄化’は郊外やローカルに限らず駅ビルでも急進しており、16年の新設駅ビル10施設では食物販・飲食・サービスが269店(72.3%)を占めてファッション関連の物販店は50店(13.4%)に留まった。
 かつて喧伝された「ライフスタイルセンター」は子供達が巣立った高級住宅地に特有の‘特権的’熟年向け商業施設で立地が限られたが、今、求められている近隣最寄型商業施設は格段に普遍的な性格で、『食物販・飲食サービス、化粧品・医薬品・理美容サービス、日用雑貨・サービス+公共サービス+オムニチャネル利便サービス+日用衣料・服飾雑貨・趣味雑貨』の近くて小さい和める生活拠点だ。アパレル店舗などは‘おまけ’の域を出ないだろう。
 有り体に言えば、増え過ぎて低効率化したアパレル店舗やファッション軸のデパート(米国では両者でSC総賃貸面積の47%も占める)が消えて行くだけで、その跡を服飾雑貨や化粧品・美容サービス、フードサービス、ECのショールームストア、これまでタブーとされて来た最寄なダラーストアや食品店で埋めて行けばSCそのものが消える事はない。中途半端な負けSCの廃墟化は避けられないが、アマゾンに圧し潰されて三割ものSCが消えるというのは杞憂に近い。
 今後、アパレル店からデパートまで一万店近い閉店が予測されているとは言え、その合計面積は最大でも全米SC総賃貸面積の2.1%に過ぎず、好調業種で容易に埋められる範囲だ。それは我が国とて同様で、カテゴリー構成を食物販・飲食サービス、化粧品・医薬品・理美容サービス、日用雑貨・サービスなどに最寄シフトして行けば商圏は狭まるが足元占拠率は高まり、多くのSCがそれなりに生き延びて行けるはずだ。
 ECと店舗を合理的に使い分ける購買慣習が広がり、今や分野によってはECが主で店舗が補完する段階になる中、アパレルや服飾など過大なバラエティを揃えて広域から集客する大型商業施設の役割は急速に萎みつつある。人口密度の高い大都市圏郊外では半径500m商圏の千坪型、半径1km商圏の三千坪型から半径3km商圏の一万坪型までで、それ以上の規模も商圏も必要なくなるのではないか。
 これまで開発された大型SCも突出した一番SCを除けば年々、商圏が縮まっており、余程の人気SCでない限り、ファッション関連に偏っては遠からずスペースをもて余す事になる。生活必需の最寄品と最寄サービスにショールームストアやTBPPを加えた「近隣最寄型オムニチャネルSC」が生活圏の主役になるのも時間の問題だと思う。
※TBPP・・・・Try Buy Pickup Point中身を確認したり試着してから購入や返品が出来る受け取り拠点で筆者が名付けて提案している。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/09/12 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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