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ネット価格は店頭より13%安い!?
 週末の日経はマサチューセッツ工科大学ロベルト・カバロ准教授による調査結果として『日本はネットのほうが安い商品が45%と調査10カ国で最も多く、平均で13%も安かった』と報じていたが、さもありなんと思う一方、大差無いカテゴリーもあるよね、とも思えた。
 日経はカテゴリー別の価格差は報じていないが、店舗からECへ価格主導権が移った家電・PC(16年のECシェア29.9%、以下同)や事務用品・文具(ECシェア33.6%)ではネット価格の方が安いにしても、ECシェアがようやく11%に迫る衣料・服飾雑貨やまだ2.3%に過ぎない食品・飲料では必ずしもそうではない。衣料・服飾雑貨ではブランド流通の慣習もあってか、値引きのタイミングこそネットの方が早いものの一物二価的状況は時差的な現象に留まるし、食品・飲料では逆に配送料の分だけネットの方が高いケースも見られる。価格比較サイトが定着している今日、ECで店頭より高く売るのは困難だが、趣味雑貨など価格が周知されていないカテゴリーや品薄な希少品では店頭の数倍で売り抜けるサイトも稀に見かける。
 食品分野のECは生鮮食品など店出荷(店の陳列棚からピッキングしている)に依存するゆえ割高になりがちだが、グロサリー食品や飲料はDC出荷だから余程の遠隔地でない限り店より安くできるなど、カテゴリーで事情は異なる。衣料・服飾雑貨は鮮度を要する生鮮食品のような消費地への前進配備が不要で一ヶ所か二ヶ所のDCから全国をカバーできるため、数十数百の店舗に在庫が分散する店舗販売より在庫の引き当て効率が高くロスを抑制できるのに加え、家賃や償却、運営人件費などの負担が大きい店舗に比べればDCの賃料や運営費、物流費の負担は格段に低い。
 売上対比の営業経費率は百貨店販路ではほぼ50%に達し、駅ビルやSCでは36〜38%と一回り低いが、手数料負担が重いモールサイト販路では駅ビルやECと大差ない。自社サイト販路なら売上の拡大とともに加速度的にコストが下がるから、年商5億円を超えればSCや駅ビルよりコストが低くなり、百億円を超えれば駅ビルやSCより13〜15ポイントも低くなる。店舗とECを分けて損益を発表している米国大手SPAでは店舗より20ポイント近く低いケースも見られる。
 ならば日経の報じているようにネット販路は一割以上安くできる理屈だが、モールサイトや店舗販売も並行している限り、同じ商品を安く売る訳にはいかない。勢い、ネット限定のクーポンを多発したりセール解禁日を先行させたりネット専用の低価格品を投入するようになる。オムニチャネル化が競われた一時期は影を潜めたネット専用品が低価格訴求品を中心に急増しているのも、そんな背景があるのかも知れない。
 ファッション分野ではECのコスト優位性を武器に価格訴求するケースはまだ稀だが、これほどのコスト格差がある以上、遠からずEC専業者による価格訴求(ポイントなど実質的な値引きを含む)が広がるのは避けられないだろう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/09/04 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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