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ファッションシステムの呪い
 先週末金曜夕刻に開催した月例「販売データ交換会」の席上、紳士服系/カジュアルチェーン系双方から‘ビジカジ’を捉えきれない実情を嘆く声が聞かれた。‘ものづくり’に拘る作り手側と‘使い勝手’を求める使い手側の埋めがたい溝は‘ビジカジ’に限らずファッションギョーカイと消費者を隔てる‘呪い’みたいなものではないか。
 巷ではアパレルギョーカイの凋落を『殺された』とか『集団自殺』とか興味本位に揶揄する事が流行しているが、川上と川下のリスクの押し付け合いによる「未必の故意の集団相互殺人」、あるいは行政の補助金漬けによる「免罪符的自殺幇助」という面はあったにしても、根本は作り手側の‘ものづくり’への拘りや感性の優越意識が使い手側の『使い勝手のよいお値打ちな生活パーツを便利に入手したい』というごく真っ当な要求と乖離して自滅を招いた『集団自殺劇』に他ならない。ものづくりや流通の仕組みもともかく、ギョーカイがファッションメディアと連携して確立してきた‘ファッションシステム’そのものが消費者の離反を招いた根源だったのではないか。
 かつてファッションギョーカイとファッション雑誌が連携して確立したBC情報格差が付加価値を生む‘ファッションシステム’がSNS情報民主化の奔流の前に崩れ去る中、ギョーカイはネットメディアやSNSを駆使して新たな‘ファッションシステム’の構築に努めているが、情報が瞬時に拡散増幅されるネット空間は同時にBC情報格差が瞬時に解消される情報民主空間でもある。ブロガーを動員したアフィリエイトやステマで短期にブランディングする‘ステマシステム’、リコメンドやリターゲティングでパーソナルな罠に追い込む‘ターゲティングシステム’の効果は空恐ろしいほどだが、そのネタを‘ものづくり神話’などBC格差に求めては往時の‘ファッションシステム’と大差なくなってしまう。
 ‘ものづくり神話’などBC格差に依存していては『使い勝手のよいお値打ちな生活パーツを便利に入手したい』という消費者側とのギャップは埋められない。着まわし易さやイージーケアなどユーティリティ要求とコモディティ価格要求を強めるAU(After Uniqlo)時代の消費者に応えるには、BC格差を無理やり創造する前時代の‘ファッションシステム’ではなく、生活消費財に共通する使い手目線の‘ユーティリティシステム’に移行するべきだ。
 80年代までの‘ファッションシステム’から逸早く離脱して顧客目線の‘ユーティリティシステム’に移行した化粧品業界と‘ファッションシステム’に固執したアパレル業界のその後の明暗をどう見るか。若年世代へのトレンド訴求から大人世代へのアンチエイジング訴求に転じて成長した化粧品業界に学ぶ事は少なくないと思われる。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/07/26 10:02  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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