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買い取らないのに欠品御法度はないよね!
 百貨店のお偉方の発言で何時もながら腰が引けるのが『お客様満足のため欠品防止に務めている』という定型句で、無邪気を通り越して「未必の故意の優越的地位濫用」と言わざるを得ない。
 買い取りならともかく委託取引や消化取引で「欠品防止」を強いては納入業者は販売消化に見合わない在庫を抱えざるを得ず、『シーズン末まで欠品を防止』とまで言われては『死ねと言うのか!』と筵旗があがってしまう。現実に、百貨店取引主体のシャツ業界などシーズン末までのサイズ在庫確保を強いられ続けた挙げ句、ほとんどの業者が経営に行き詰まってしまった。そんな窮地を脱出すべくSCや駅ビルの直営店に活路を見出したり、売れる色柄・サイズだけ週サイクルで補正生産して売り切り御免に徹するシャツ屋さんしか、もはや生き残ってはいない。
 百貨店はサプライチェーンの現実を見ようとせず自らの都合を押し付けた挙げ句、非効率な流通を強いて割高な価格にしてしまい、顧客を離反させ納入業者の経営を傾かせて自らの足元まで崩してしまった。一部の百貨店は自主MDに活路を見出そうとしたが、長年の委託取引や消化取引でバイイングも在庫コントロールも売場の編集運用もスキルが劣化して採算の目処が立つ運営が出来ず、どこも行き詰まっているのが現実だ。‘一流企業’と持ち上げられても長年にわたって実戦を離れていた付けはあまりに大きく、お公家化した平氏の辛酸を舐めている。
 一部の合理的な百貨店経営者はそんな実態を喝破して逸早く自主MDに見切りをつけ、テナントを拡大して不動産業にシフトし、運営人員を削減し組織をスリム化して経費率を切り下げ、自主MDに固執して経費率が肥大した百貨店との格差を広げた。そんな百貨店業界と似たようなジレンマに陥りつつあるのが、今や飛ぶ鳥落とす勢いのECモール事業者だと言ったらピンとは来ないでしょうね。
 どこのECモールも在庫を預かっての手数料商売だから‘消化仕入れ’の百貨店と実態は変わらず、欠品防止を求めてブランド側の店舗やサイトと在庫を奪い合い、ブランド側とてクーポンやタイムセールを乱発し低価格の専用商品に走って経費率を押し上げている。ECが無限に伸びるものなら破綻はないかも知れないが、ブランド単位に見れば明らかに限界点が見え始めている。日米ともに店舗とECがカニバリに陥る‘臨界点’は20%前後にあるようだし、低コストなアフィリエイト型プラットフォーマーが高手数料率のフルフィル型プラットフォーマーの牙城を切り崩すのか、はたまた手数料が上乗せされるだけなのか、ECとて不透明感が増している。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/06/28 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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