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イリュージョンとソリューション
 経営もマーケティングもイリュージョン(幻影の発信)とソリューション(実務的解決)のバランスが肝要だと思うが、このギョーカイはイリュージョンに流れがちで、皆が思い込んで一方に走っている時に警鐘を鳴らしても聞いてはもらえない。一時は『皆で渡れば大丈夫』であっても、ビジネスの成否は需給で決まるから、オーバー供給になってしまえば『皆で渡れば皆殺し』という結末が待っている。
 卑近なところでは‘売れ筋の追っかけ’もそうだが、大きな時代のうねりでは‘定期借家契約によるSC出店’も、幾度もオーバーストアが危ぶまれ『売れない店をどうして出店するの?』と警鐘を鳴らしても、熱くなって競走馬みたいに前しか見えなくなっていると誰も警鐘に耳を傾けはしなかった。その結末が不振店の続出と退店ラッシュ、巨額のペナルティや除却損の負担という悲劇だが、確かな売上予測に基づいて冷静に選別すれば、ほぼ避けられた事態だったのではないか。
 出店政策は極端から極端に走る事が多く、『バスに乗り遅れるな』とダボハゼ的に飛びつくかと思えば、一度逆風になると‘超優良物件’さえ猫又に敬遠してしまう。今回のメンバーアンケートで断トツ第1位に評価された「イオンモール長久手」にしても、テナント募集段階が氷河期的販売不振と店舗リストラの最中だったため大手が軒並み敬遠してしまい、ローカルチェーンが目立つ構成となってしまったが、開業後の大成功を見て今更悔しがっても手遅れだ。
 SPACメンバーには主要な開業・増床物件は子細に検証した売上予測をほぼ1年前に提供しており、慎重に吟味するなら失敗は避けられるはずだが、出店物件の結果成績を集計する段階では『売れない』『止めとけ』と明示した物件にも少なからぬメンバーが出店して散々な結果を報告して来るから、何かが擦れ違っている。
 経営陣と店舗開発スタッフの意思疎通に問題があったり、出店判断段階の販売業績が影響していると推察されるが、その時の‘空気’が個々の物件の冷静な判断を阻害しているのではないか。人が動かす組織だから‘感情’や‘空気’が意思決定を左右するのは仕方ないが、イリュージョン(空気感)とソリューション(科学的実践的検証)は明確に区別すべきだ。
 さて今のギョーカイの‘空気’は『EC拡大に遅れるな!』一辺倒という感があるが、その一方で出店や店舗運営への経営陣の関心は希薄になっている。ECを拡大すれば売上は伸びるし在庫効率も経費構造も改善されるから良いことずくめに思えるが、一線を越えればオムニチャネル効果を相殺して店舗販売が落ち込み、売上総体が縮小スパイラルに転じてしまう。
 ファッションEC比率が20%に迫る米国で起こっている大量閉店ラッシュを対岸の火事と見てはいけない。「オムニチャネル」が心地よいイリュージョンだった良き日はとっくに終わり、今やシリアスなソリューションが問われている。オーバーストアと同様、オーバーECも‘集団自殺’のトリガーを引きかねないのだ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/04/26 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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