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オーバーストアとオーバーECの罠
 今週金曜28日に開催するSPAC月例会は「開設予定注目商業施設総点検」をテーマに、今秋から来春にかけて開業・増床する注目商業施設の売上を予測するとともに、過去3年間に開業した主要商業施設の現状を出店したメンバー企業の報告を軸に検証したが、『ここまで来たか!』と絶句する悲惨な実態が露わになった。
 集計34施設中、好調施設はAプラス評価の「イオンモール長久手」のみで、A評価も何とか堅調というBプラス評価も今回は見当たらず、B評価が6施設、Bマイナス評価が16施設、C〜D評価が11施設と惨憺たるものだった。昨春調査ではA〜Aマイナスが6施設、Bプラスが2施設、Bが11施設、Bマイナスが12施設、C〜Dは8施設だったから、売上の落ち込みは極めて急激だ。
 エンターテイメント施設や飲食集積で集客は出来ても物販店の売上には繋がらず、館は何とか予算に届いてもファッションテナントは大半が予算未達という傾向が年々強まっており、今回はららぽーとの新設施設に顕著に現れた。ちなみに当社の評価はAA、Aプラス、A、Aマイナス、Bプラス、B、Bマイナス、C、Dの9ランクで、ファッションテナントの平均坪効率で厳密に位置付けている。
 出店の成功率は昨年の20.5%(5店に1店)から2.9%に急落。C評価以下の失敗率は昨年の51.3%から79.4%に跳ね上がった。この34施設にメンバー企業が出店した448店中、既に退店したか退店を決定、退店を検討中の店舗は2割を超え、開店から2年以上が経過した14施設に限れば3割に迫る。
 12〜14年は出店の失敗率は三分の一程度だったのが昨年は二分の一に悪化し、今年はほぼ五分の四が失敗という惨憺たる状況になった。ロシアンルーレットだって‘失敗率’は六分の一なのだから、三分の一だって自殺行為で、五分の四など‘集団自殺’と言うしかない。結果が出たのは直近だが、出店したのは1〜3年前で、出店を決めたのはさらに半年〜一年前だったはずだから、悲劇のトリガーはかなり前に引かれていた。
 その頃から『売れない店をどうして出店するの?』と度々警告していたのに、メンバー企業でさえ聞く耳を持たなかったのだから、他は推して知るべしだろう。『皆で渡れば大丈夫』じゃなくて『皆で渡れば皆殺し』というのが結末だった。
 こんな状況を招いたのはオーバーストアをものともしない‘集団自殺的’商業施設開発はもちろん、衣料・服飾分野の急激なECシフトが大きく影響している。我が国のファッションEC比率も11%に迫り(経産省4月24日発表)、19%に達してアパレルチェーンや百貨店の大量閉店や経営破綻が加速度的に広がる米国の二の舞は時間の問題と思われる。
 ブランド/業態単位に見るなら、売上規模やMDの特性にも拠るが、EC拡大が実店舗の閉店ラッシュを招いて売上総体が縮小スパイラルに転ずる‘臨界点’は25%前後に在るのではないか。近々、日米の実例を検証して報告しよう。EC比率を30%、40%に上げて行こうという勇ましい掛け声が見落としている‘罠’にそろそろ気付くべきだ。
 オーバーストアの罠もオーバーECの罠も勢いに乗っている時は見えはしない。競走馬のように前しか見えなくなっているからだ。オーバーECがオーバーストアのような‘集団自殺’を招かない事を祈りたい。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/04/25 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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