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百貨店はECで絶滅するの?
 ECに圧されて大量閉店や身売りが広がる米国のデパート業界だが、我が国の百貨店はどうなるのだろうか。オムニチャネルを標榜してECを拡大して来た米国のデパートさえ総崩れなのだから、EC比率が1%程度に留まる我が国百貨店の命運は風前の灯と言うしかない。
 米国デパートの17年1月期のEC比率はニーマンマーカスで29.0%(前期は26.3%)、ノードストロムで22.2%(前期は20.1%)、メイシーズはEC比率を公表していないが15%以上といわれる。それでもアマゾンなどECに圧されて三社とも既存店売上が減少し減益決算が続く窮状で(メイシーズとニーマンは全社売上も減少、ニーマンは赤字転落)、各社ともデパート事業の先は暗いと見て不採算店の閉鎖とOPS事業の拡大を急いでいる。
 米国デパートに較べれば我が国百貨店のEC比率は格段に低位に留まったままオムニチャネル対応も抜本的に遅れており、追い着く見込みも無い。同じ背景からOPSへの進出も難しく、不採算店の閉鎖と資産売却、人員整理の果てに細って行くか、SC型の運営に切り替え人員整理して生き残るしか選択肢が見えない。
 米国デパートは曲がりなりにもセントラルバイイング&DB体制を確立しており、買い取った商品を店間移動・売価変更して売り切る仕組みが定着しているが(化粧品や宝飾品、靴の一部は我が国同様なコンセ)、我が国の百貨店は個店単位の消化仕入れに留まってセントラルバイイング&DB体制を確立出来ず、自在な店間移動や売価変更はもちろん、ECサイトに載せる‘ささげ’も‘商品登録’も適わず、通販フルフィルメントも持たない。ゆえにECもキュレーションやアフィリエイトに留まってダイレクトな事業展開に至らず、1%前後に低迷したままなのだ。
 その一方、ファッションECモールもブランド事業者のECも急速な拡大を続けて衣料・服飾のEC流通シェアは10%の大台に乗り、速くて安価で確実な宅配インフラに乗って米国並みの流通シェア(ほぼ18%)へ近付いて行くのは時間の問題だ。米国で現実となったように、臨界シェア(恐らく12〜13%)に達すれば雪崩的なECシフトが起こって店舗販売は壊滅的な打撃を受ける。そうなれば我が国の百貨店は地方店や郊外店はもちろん旗艦店まで売上の急落に直面する。
 そんなカタルシス的自然淘汰が刻々と迫る中、もはや面子も雇用も構ってはいられない。徹底したリストラで不動産事業化するか、全社火の玉となってオムニチャネルな巨大ショールームストアへ変貌するか、二者択一の刻が迫る。
 そんな中、‘希望の星’と見えたのが阪急百貨店の新しいECサイ(ビューティ/メンズ)で、ビジュアルと構成がZOZO並みに便利で洗練されていて、商品ページに「店舗受取」選択まで付いて来る。伊勢丹の不便なサイトを見て百貨店のECは駄目だと思い込んでいたが、仕入れ先の理解を得て‘ささげ’して便利なプラットフォーム(マガシークがサポートしている)に載っければ、買い取らなくても壁は越えられるのかも(ZOZOだって在庫を預かっているだけ!)。
 「店舗受取」で売場に送客し宅配で商圏の際を超え、タブレット接客で品揃えの物理的制約を超えれば、「巨大ショールームストア」に変身するのも夢ではない。販売力さえあれば‘預かり’でも商品は確保出来るのだから、よく出来たECフロントとフルフィルに載って「本店」の知名度と販売力を活かせば壁は超えられるのかも知れない。阪急百貨店の‘結果’を見たいものだ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/03/30 10:34  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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