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返品率はどこまで上がるの?
 『返品率はモラルの問題ではなく購買慣習で、‘慣習’が変れば返品率も変わって行く』と以前のブログで指摘したが、「返品自由」を謳うサイトでガンガン買って試着してどしどし返品していたら注文を拒絶されてしまったという体験談をSNSで目にした。その人は返品率こそ過半を超えていたが相当額を購入していたそうで、悪意とは見えなかった。
 アパレル通販の返品率は欧米では20%(靴は30%)前後と言われるが、我が国ではTVショッピングは欧州並みでもカタログ通販で10%前後、ECでは3〜5%と低率に収まって来た。その要因は『日本の消費者は遠慮がちで返品を躊躇する人が多いから』とされて来たが、多くのEC事業者が顧客都合による返品を拒否して来た事が本当の要因だ。
 SPACメンバー自社サイトの返品率(返品可サイトの平均)は2013年の2.6%から14年が3.1%、15年が3.6%、16年が4.6%とジリジリ上昇して来たが、17年は上げ止まった。この間、最大返品率も10%を超えず、返品を容認しても最大10%までに収まると期待する根拠となっていたが、果たしてそうだろうか。
 日本でも『21日間返品・サイズ交換・送料無料』を謳って急成長している靴のEC「ロコンド.jp」では初期の20%弱から16年2月期は39.0%と返品率が上昇したから、『返品無料で買ってから選ぶ』という購買スタイルが認知されて売上が伸びるほど返品率も高まって行くというアイロニーが指摘される(17年2月期の第三四半期まででは衣料品やバッグが増えたせいか32.8%とやや抑制されている)。さすがにアパレルでは靴ほどの返品率にはならないと思うが、『返品無料で買ってから選ぶ』という購買スタイルが一般化すれば靴に迫る日が来るかも知れない。
 返品率はモラルの問題ではなく時代の購買慣習だから、サイズ選択に限らず、『いっぱい取り寄せて散々試着して選ぼう』と積極的に利用する顧客が一般化して行けば、返品率は20%30%どころか50%になっても不思議はない。店舗で何着も試着して選ぶ事を考えれば、顧客に悪意は認められない。
 『オムニチャネル化が進めば、店舗にEC同様な利便、ECに店舗同様なサービスが求められるようになる』と幾度も指摘して来たが、『試着して選ぶ』という店舗同様なサービスがECに求められるのは必然かも知れない。「ロコンド」は『買ってから選ぶ』と謳うが、『買ってから選んで返品』すれば‘返品’だが、『選んで買って残りは返す』なら‘返品’ではなく店舗販売同様な選択に過ぎないのではないか。
 この話がピンと来ないのは、『試してから買う』という‘通販商品お試し受け取り所’(Try Buy Pickup Point)が我が国にはまだ存在しないからだろう。返品が‘常識’になる近い将来、この「TBPP」が普及していないとEC事業者は再販不能な返品商品で経営が圧迫されてしまう。明日はこの「TBPP」を説明しよう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/03/28 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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