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衣料品のお値打ち感とは
 近年の衣料販売不振の要因として『お値打ち感の劣化』が指摘されるが、単に原価率の高い低いだけでなく、鮮度感や差別化価値、着用頻度や耐用年数も合わせて‘お値打ち感’が評価されていると見るべきだ。
 衣料品の‘お値打ち感’はその性格によって評価基準が異なる。償却期間から見て、1)インベスティメント・クローズ(多年償却衣料)、2)ランニング・クローズ(2〜3シーズン償却衣料)、3)ファスト・クローズ(ワンシーズン償却衣料)と大雑把に仕分けて考えてはどうか。
 1)インベスティメント・クローズは完成された定番的デザインで6シーズン(6年間)程度は陳腐化せず、品質が高くても耐久性があり(一般に高級品ほど耐久性は乏しい)、出番も結構在って高価でも償却出来る。何年もかけて出過ぎず遅れずのデザインとスペックに収斂させた‘完成度’が問われる高級ブランドの看板アイテムで、二次流通価値も高い。高価でも売る側も買う側もリスクが小さい賢い買い物だ。
 2)ランニング・クローズは日常生活でヘビロテ出来るアップツーデイト(今風)なデザインで、購入するサイクルにも拠るが2〜3シーズン(2〜3年)程度は陳腐化せず、その間のヘビロテに耐えられる品質と耐久性があれば多少ベターな価格でも『使い切れば元が取れる』と納得できる。ブランド商品の中核だが同質化し易く、所詮は「複シーズン使い捨て商品」で価格競争も激しく、二次流通価値も購入シーズンを過ぎれば急落する。3シーズン使い回すつもりが1シーズンで箪笥の肥やしと化してしまうリスクもあり、売る側も買う側もリスクが大きい。
 3)ファスト・クローズはコーディネイトに鮮度を加えるデザインアイテムで、『ワンシーズンで着捨てる』と割り切れる価格であれば多少の難には目を瞑って楽しめる。ワンシーズン限りで捨てるものだから二次流通価値はゼロ円だが、短サイクルで開発する生鮮商品ゆえ、売る側も買う側も大きく外す事のない低リスク商品なのかも知れない。
 
 数多のブランドは何処に位置付けられるのか、価格帯に準じるとも限らない。高価でもトレンド性の強いブランドは「高級ファスト・クローズ」であり、そのシーズン中の価値は高いが、翌シーズンに着るには相当の勇気を要し、二次流通価値も急落してしまう。トレンドサイクルが一巡して「ヴィンテージ・クローズ」として再注目されれば骨董価値が生ずるが、概ね四半世紀ないし半世紀を要する。
 百貨店のベターゾーンから「ユニクロ」まで大半のブランドは「ランニング・クローズ」で、今風のデザインやシルエットに加えて日常生活でヘビロテ出来る着回し易さと機能性、イージーケアが問われる。見た目にきちんと感があって耐久性もそこそこで、自宅の全自動洗濯乾燥機やコインランドリーで洗えばノーアイロンで着れるお手軽さが必須条件になって来た。下手にクリエイションを追求しては着回しも機能性も損なわれてワンシーズンで箪笥の肥やしになりかねないし、ファスト・クローズ的トレンドを追えばワンシーズンで着捨てるしかなくなってしまう。それに懲りた顧客はブランドから離れていく。さても商品開発の匙加減は難しいものだ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/03/01 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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