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百貨店の五つの選択?
 衣料品の低迷で地方店や郊外店、都心でも負け組店舗の撤退が続く百貨店だが、長い目で見れば変質が著しいから、ひょっとするとまったく異次元の姿に変貌するやも知れない。
 百貨店売上がピークだった91年には40.6%を占めていた衣料品は16年には31.7%にシェアを落とし、替わって身の回り品が9.2%から13.0%、化粧品が推定2.9%(百貨店協会の統計は2006年以降)から7.3%、食料品が21.6%から28.1%に増え、売上構成は大きく変わった。郊外SCや駅ビルでも衣料・服飾関連店舗が減って食物販・飲食サービス店舗に逆転され、化粧品・理美容サービス店が増えているから必然の変化だったのだろう。
 百貨店協会の統計を遡れる最古の1965年の売上シェアを見ると、衣料品が42.9%、身の回り品が8.1%、食料品が17.5%だったから、身の回り品と食料品は一貫して増えて来たのだ。その替わり減って行ったのが衣料品と家具/家電/生活雑貨などの家庭用品で、家庭用品は65年の14.6%が91年には10.1%に減り、16年には4.5%まで落ち込んでいる。今日では衣料品・身の回り品・化粧品・理美容サービスに特化してギフト雑貨やチョコ/キャンディぐらいしか残っていない米国のデパートメントストアでも、70年代までは家電売場もインテリア売場も相当の面積を占めていた。
 そんな変貌を振り返るなら、食品売上が衣料品売上を抜き、食品・飲食サービスを主役に衣料品・身の回り品や化粧品・理美容サービスが脇役を固める姿になっても驚きはしない。昨年度に開設された駅ビルの大半は食品・飲食サービスが主役で、ファッション関連は‘おまけ’でしかなかったからだ。
 近未来の百貨店は1)食品・飲食サービスを主役に衣料品・身の回り品や化粧品・理美容サービスが脇役を固める洒落た「ライフスタイル勧工場」となるか、2)売場貸に徹してテナントビル化するか、3)オムニチャネルなプラットフォームを確立してブランドを網羅した巨大ショールームストアに変貌するか、4)セントラルバイイング&ディストリビューション体制を確立して巨大セレクトショップチェーンに変貌するか、5)セントラルバイイング&ディストリビューション体制をベースにOPS(オフプライスストア)に主力を移すか、のいずれかだと思うが、3)はアマゾンやZOZOに張れるフルフィルメント体制が前提となるし、4)は単純な買取さえ今までまともに出来なかったのだから今更、Nordstromに化けられる訳もなく、『ご無理でしょう』と申し上げるしかない。5)は4)を前提としての派生戦略だから、これも『ご無理でしょう』。となれば現実的な帰結は1)か2)になってしまうが、それではあまりに不甲斐ないのではないか。
 これまで幾度も危機を指摘されながら、既得利権と面子に固執し納入業界にツケを回して共倒れを強い、ミニバブルだインバウンドだと棚ぼたの神風を期待して抜本的な改革を先送りし、とうとう後がないところまで来てしまった百貨店業界だが、まだ何とかなると思っている節がある。このままでは良くて1)か2)、悪くすれば不採算店を切り捨て社員を振り落とした果てに地域の商業遺跡として本店を残すだけになりかねない。
 まだ面子があるなら3)か4)を目指して死に物狂いで全社員が特攻すべきだと思うが、花鳥風月な歌舞音曲を演じて時を過ごすなら、新手の武士達に全てを奪われてしまうだろう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/02/20 09:57  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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