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綺麗事で販売員不足は解消しない
 衣料販売の低迷が極まってブランドの廃止や大量閉店、希望退職などが広がっているが、なぜか店頭の販売員だけは‘人手不足’のようで、業界では相も変わらず「ロールプレイングコンテスト」など啓蒙活動が盛んだ。
 売上が減少してもブランドや店舗が減っても販売員不足が解消しないとは摩訶不思議だが、そこにこそ販売員を取り巻く問題の根がある。いったい販売員の‘職務’とは何なのだろうか。労働時間に占める比率の高い順に作業を並べてみると、「販売員」という名称に似つかわしくない実態が浮かび上がってくる。
 最も比率が高いのが「店内物流作業」で、量販型の衣料チェーンでは労働の大半を占める。具体的には品出しや試着品の棚戻し、陳列整理や補充、在庫探しや棚卸しで、物流センターのピッキングラインと大差ないが遥かに非効率だ。オムニチャネル化がショールーム方向へ向かえば在庫が減って作業量も減るが、米国のように店出荷に依存すると店が非効率な物流センターと化してしまい、余計に物流作業が肥大してしまう。
 次に多いのが「精算作業」で、量販衣料チェーンや雑貨店ではピーク時にはレジに待ち列が出来てかかりっ切りになる。いわゆるレジ打ちと包装で、スーパーならキャッシャー/サッカーの業務だ。「店内物流作業」も「精算作業」もショールーム化とRFIDタグ導入で画期的に圧縮できるから、現状は出来る改善をしないで放置している無策と責められても致し方あるまい。そんな投資をするより低賃金で「販売員」を使い続ける方が効率的だと判断しているのだろう。
 「精算作業」と大差ないのが「店番」で、客数の少ない店や営業時間が長い店では結構な比率を占める。具体的には「何もしていない待機時間」で、店内レイアウトに死角が在ったりストック室に入る頻度が高いと‘最低保守員数’が増えてしまい、結果として「待機時間」が肥大してしまう。「待機時間」の圧縮は営業時間の短縮と勤務コントロール精度の向上に加え、ストック室の廃止と店内死角の解消による‘最低保守員数’の圧縮が決定打となる。
 意外に多いのが「管理作業」で、販売員も兼ねる店長や副店長が社員やパート/バイトの勤務コントロールや報告書作成でサービス残業を強いられるのが常態化している。フォーマットを定めて各自が書き込むグループウエアやFACEBOOKのクローズドグループを活用すれば、随分と軽減されるのではないか。
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 と言う訳で、肝心の「接客販売」(在庫探しや売場案内は含まない)は駅ビルやSCのお手頃衣料店で10%未満、物流センター紛いの量販衣料チェーンでは5%にも届かず、高級ブランド店やデザイナーブランド店でようやく二割三割に達して‘主要作業’となる。「販売員」を「接客販売」に集中させない限り専門職化も報酬の向上も夢物語で、ロールプレイングコンテストや‘おもてなし’‘神懸かり’キャンペーンなど啓蒙活動以前に解決すべき課題が山積している。
 AIや販売員のパーソナリティー化で顧客コミュニケーションが進むECと利便が比較されざるを得ない店舗販売の劣勢を考えても、もはやEC一体のオムニチャネル利便は必須で、店舗運営のシステムと販売員の職能は抜本から変らざるを得ない。「販売員」不足の解消は綺麗事の啓蒙イベントやキャンペーンではなく、店舗運営と販売のシステムを根幹から改革して「販売」の生産性を向上させ、専門職化と報酬の向上を実現することで果たされるのではないか。
 ちなみに‘専門職化’とは必ずしも古典的な「販売専門職」を意味しない。「フィッター」や「オムニチャネル・パーソナリティー」、中大型店では「ストア(ビジュアル)マーチャンダイザー」や「ストア在庫コントローラー」なども効果の高い専門職になるのではないか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/02/14 09:56  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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