« 前へ | Main | 次へ »
化粧品業界は何故、破綻しないの?
 アパレル業界と極めて近いのが化粧品業界だが、過剰供給と価格崩壊で破綻に瀕するアパレル業界に比べれば値崩れが限られ、傍目には‘正常’流通を維持しているように見える。
 衣料品では製造原価率が30%を割れば‘お値打ち感’は相当に怪しくなり歩留まり率が低下してしまうが、制度品化粧品の製造原価率は一般に売価の15〜20%程度(容器代や開発費も含んだもので原料費だけだと5%以下)とされる。原料や容器の開発から薬事法対応まで体制が整ったOEMメーカーの存在が大きくブランド開発もサポートしており、大手化粧品メーカーでも自社生産とは限らない。それでも衣料品のような値崩れが広がらないのは、ひとつには流通システムが整理区別されている事、ひとつには人口が減少する中もマーケットが拡大している事が要因と思われる。
 化粧品の流通は1)かつての再販売価格維持制度時代に確立された「制度品」流通、2)80年代以降の市場開放によって新たに形成された外資ブランド中心の「百貨店」流通、3)ドラッグストアやスーパーの棚に並ぶ「一般品」流通、の三本を基軸に4)戦前からの「訪問販売」流通、5)90年代以降に急成長して近年はTVショッピングやECにも広がった「通信販売」流通、6)美容院やエステサロンでプロが使い顧客にも販売される「業務用」流通、の6チャネルから成る。
 再販売価格維持制度は74年と97年の2段階で廃止されたが、資生堂に代表される「制度品」は委託販売契約と販社制度、美容部員派遣など手厚い販売支援体制によって今日も‘正価’流通を維持しており、衣料品では往時の「コルディア」など専門店NBに相当する。「百貨店」はロレアル、エスティローダー、LVMH、シャネルなど外資化粧品や「M・A・C」「ボビィブラウン」などアーチストブランドに「制度品」や「訪問販売」「通信販売」の勝ち組ブランドが加わるが‘正価’流通を維持しており、衣料品ではラグジュアリーブランドやデザイナーブランドに相当する。
 問屋経由で様々なチャネルに流れる「一般品」は値引き販売が常態化しているが、「ブルジョワ」などバラエティストアや百貨店バラエティコスメ部門などに絞って直販するブランドは‘正価’流通を維持している。衣料品で主流のSPA型は「ボディショップ」「ロクシタン」などナチュラルコスメ、「フェイスショップ」「MISSHA」など韓国コスメが拡大しており、「通信販売」「訪問販売」のブランドも直営店を広げている。
 「一般品」を除き‘正価’流通が維持されている理由は、1)ブランドメーカーが美容部員という体系的に訓練された販売支援要員を貼り付け、独自の美容診断機器などを駆使して専門的なコンサルティングセールスを行っている。2)トレンド性の強いメイクアップ商品は一割前後に限られ、顧客性の強いスキンケア商品が大半を占める。3)季節毎に売り切らねばならない商品が限られ、ブランドイメージを守る決意が固いこともあって値引き処分が行われず、不良在庫品は法的規制に基づく専門的な手順で処理されている・・・・などと推察されるが、トレンド商品、シーズン商品が限られバーゲン処分という慣習が無い事が大きいのではないか。
 肌に合う合わないが問われる化粧品では顧客の獲得と維持が要であり、無料サンプル配布などで先行投資しても顧客が継続的に購入すれば採算が取れる。「顧客化」こそが至上命題で、トレンド的なキャンペーン戦略はメイクアップアイテムの‘プロモーション’を除けば80年代で終わっている。アパレル業界のマーケティング感覚は80年代で止まっており、未だトレンドだクリエイションだモノづくりだと見当違いな無駄弾を打ち続けているが、化粧品業界に学ぶべきではないか。化粧品業界的感覚で言えば『独自のパターンと素材特性で顧客を掴む』のが正解で、ストレッチパンツの「ビースリー」など化粧品業界のマーケティングに通ずるものがある。
 もうひとつ、『人口が減少する中もマーケットが拡大している』のは化粧世代が上下に広がっているからで、かつては高校生からミセスだったのが今や小学校高学年からマチュアまで広がり、とりわけ高齢世代向けの「エイジング化粧品」は高価な事もあって化粧品メーカーを潤している。アパレル業界は若くてカッコいい世代ばかり追って「エイジング衣料品」の巨大マーケットを見過ごしてきた。高齢者向けと言ってはルーズな渋レイヤードルックかド派手な老い隠しルックばかりで、美しく老いていく高齢者に化粧品的なアプローチはして来なかった。
 美しく老いていく‘エイジングビューティー’へ、肌に優しい素材や無理なく美しく躰を整えるパターンなど、アパレル業界が開発すべき課題が山積している。四面楚歌のアパレル業界だが、お隣の化粧品業界に学んでも良いのでは・・・・

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/12/21 10:00  この記事のURL  /  コメント(0)

コメントする
名前:
Email:
URL:
クッキーに保存
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー リンク


コメント


« 前へ | Main | 次へ »


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ