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水平分業と垂直分業
 衣料品のものづくりはファクトリーブランドを除けば「水平分業」が主流で、SPAでは零細なキャリー商売から巨大ロットのグローバルSPAまで皆「水平分業」で作られている。実は我が国で「水平分業」が主流となったのは衣料品の生産が海外に移転した90年代以降で、80年代の過渡期を挟んで70年代までは「垂直分業」が大勢だった。
 「水平分業」と「垂直分業」って何が違うの?と思われるだろう。他にも「垂直統合」ってのがあるが、「水平統合」ってのは存在しない。
 今日の「水平分業」は‘水平’という言い方とは裏腹に、製品の発注者が随時に下請け業者を探して生産を委託する方式で、最終リスクも利益も発注者に集中する。リスクも利益も発注者に集中するのは「垂直統合」も同様だが、発注者と元請け、下請けの関係が継続的である点が大きな相違だ。
 「水平分業」はコストやロット、納期が折り合う生産者を探して随時に発注するフリーランスな関係で、仕様や品質の擦り合わせに難点があるが、その時々のニーズに機動的に対応できるメリットがある。「垂直統合」は発注者から元請け、下請け、果ては孫請けまで長期に継続する封建的主従関係(双務的で一部、流動的でもあるが)で、仕様開発のチームワークや品質の擦り合わせ精度は突出するものの、身軽な機動性は望み難い。
 一般にIT/家電は「水平分業」、自動車/航空機は「垂直統合」とされるが、「水平分業」でもアップル社と台湾のフォックスコン(鴻海科技)のような継続的共同開発関係もあれば、裾野が広い航空機製造では部分的に「水平分業」を取り入れるケースも見られる。「水平分業」一辺倒に見られがちな衣料品や服飾品でも高額なブランド商品は「垂直統合」が大勢で、ラグジュアリーな革製品や宝飾品・時計では製品はもちろん主要部品まで自社生産する「垂直完結」が競われている。全産業分野で見れば、「水平分業」は低価格・低スペック品の大量生産に特化した流動的生産委託方式なのかも知れない。
 さて70年代まで我が国繊維〜アパレル業界で主流であった「垂直分業」とは、糸/テキスタイル/製品/小売のそれぞれが各段階でリスクを負って完結する分業関係で、今日のようにアパレルメーカーやSPAが発注者となって川上が下請けとなる一方通行ではなかった。今日でも合繊メーカーは独立した主導権を発揮しているが、テキスタイル段階の多くは受注生産に流れ、縫製段階は完全に下請け化している。
 当時の「垂直分業」が成り立ったのは、今日のような供給過剰でなく低価格要求も激しくなかったことに加え、国内完結の「垂直分業」ゆえ高スペックな商品開発がファストに回って高付加価値が高回転していたことが指摘されよう。マンション・テキスタイラーとかマンション・メーカーとかはそんな時代が生んだ高収益モデルだったのだ。
 さて今日の衣料品業界で「垂直分業」が成り立つかだが、開発力あるテキスタイル・コンバーターなら十分成り立つし、韓国ではファスト・テキスタイスラーが今日もメジャープレイヤーの地位を保っている。製品分野でもファクトリーブランドはその代表で、下請けを脱して独自の製品を開発〜流通させる体制さえあればグローバルに化けることも可能だ。欧米ラグジュアリーブランドなんて元は皆、ファクトリーブランドだったのだから。
 今日ではEC軸のFDOR事業も容易に成り立つし、SNSとクラウドファンディングを軸とした低コストなブランディング手法も定型化されつつある。『突破口は製造事業者の下請け意識払拭に在る』と言い切ってもよいのではないか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/10/26 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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