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デザイナーの商業的価値
 こんな私でも偶さかデザイナーの選択や投資判断にアドバイスを求められる事がある。ランウェイ巡りから離れて久しいし最近は展示会を見る機会も減っているから(店頭巡回は今でも怠らないが)、毎シーズンの出来不出来を評価する資格はもちろんないし、クリエイションのアイデアやテクニックを論じる立場でもない。ただ、どの時代のどんなカルチャーやコレクションアーカイブ(私もギョーカイ人の端くれとして70年間の推移を頭に入れている)が背景となっているのか、そのテイストやスタイリングがどんな客層に受け入れられるか、今日のライフスタイルやユーティリティとの親和性は期待できるのか、売場を維持出来るMDストーリーに落とせるのか、といったバイヤーあるいは投資家としての判断はできる。
 あくまで商業的価値評価であって芸術的?‘作品価値’を評価するものではないが、これまで販売実績や市場性を定量的に検証したマップなどを公表する度に『クリエイションを数字で評価するのか!』などとクリエイション教信奉者達に石もて追われてきた半生を振り返れば、このギョーカイはホントに顧客を愚弄していると思わざるを得ない。顧客にとって新鮮で使いやすいクリエイションが販売に繋がるのは当然で、時代のライフスタイルやユーティリティと懸け離れたクリエイションが受け入れられないのは致し方ないのではないか。
 エレガンス系にせよアバンギャルド系にせよ、欧米のデザイナーは人間工学とクチュリエ技術に基づくモードの美学に立脚しており、人体から乖離したフォルムやパターンは得意ではない。一方で何処かにキモノのユーティリティが通底する我が国のクリエーターは伝統的なモードの美学に捉われず、人体から乖離した直線的あるいは幾何学的なフォルムやパターンを物怖じせずに打ち出して来た。
 今日のデザイナーも西洋的なモードの美学に立脚するクチュリエ出自派、ジャポニスムの中でもモードの美学を打ち壊すアバンギャルド派と独自の構造美を追求するアーキテクチャー派、ジャポニスム出自ながらストリートとのフュージョンを志向するストリート・ジャポニスム派、セレクトショップを取引先として発展した単品感覚のトーキョーセレクト派、そこからグローバルに進化したモダン・トーキョークリエーター派、まったくのストリートから発したトーキョー裏ストリート派・・・・・などに一応は仕分けられる。
 今日のマーケットが求めるユーティリティとの親和性は後のグループほど高く、前のグループほど低い。クチュリエモードの美学とクリエイションの完成度を追うほどユーティリティから乖離し、そのユーティリティも時代とともに変わっていくからだ。好不調を販売数字に見る限り、より新鮮なユーティリティに寄り添うデザイナーほど好調に見えるが、そんな事を言えばまた『クリエイションを冒涜するのか!』と礫を投げられるのだろうか。ガリレオ・ガリレイを気取るわけではないが、このギョーカイは未だクリエイション教会の暗黒支配‘ファッションシステム’を脱却出来ないまま情報民主化に取り残され衰退して行くしかないのだろう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/10/14 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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