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歩留まり率と持ち越し率
 定価で全量を販売出来たら歩留まり率は100%だが、このギョーカイではそんな話は滅多に聞かない(逆臨界点商法なら可能だが)。定価で売り切れないとキックオフや値引きなど売価変更して売り切ろうとするから「値引きロス」が発生する。それでも期末まで売り切れないと「持ち越し在庫」が残ってしまう。
 持ち越したくなければ再度売価変更したりアウトレット部門に回して処分するから、値引きロスは雪だるま式に肥大してしまう。期中に値引きせず期末にまとめてバーゲンして売れ残りは何度かのファミリーセールで処分する、というやり方では期中値引きより格段に値引きロスが肥大するし(SPACメンバー統計では値引きロスで4ポイント強、在庫回転で26%もの格差が認められる)、持ち越し在庫が投入量の一割を上回るケースが多い。それを翌シーズンまで抱えてアウトレット店で処分するという古典的な方法では年々、持ち越し在庫が累積してキャッシュフローを圧迫する事になる。Jクルーの暗転など、持ち越し在庫の怖さを痛感させる‘事件’であった。
 アパレルでは『持ち越し在庫の価値はゼロ』が原則だから、値引きロスが嵩んでも期中に処分し切るのが鉄則で、翌期に持ち越さずアウトレットにもシーズン中に回してしまうべきだ。それでもアパレルチェーンで数%、アパレルメーカーでは10%強(今期はそんなものでは済まないが)が持ち越し在庫になると言われている。持ち越し在庫の換金価値は調達原価の半分以下だから(ものによってはパッキン幾らになってしまう)、シビアに減損評価替えせずに10%も持ち越しては決算利益が大きく粉飾されてしまう。アパレル企業の決算は在庫の中身が開示されない限り眉唾を付けたくなる。
「歩留まり率」とは期中の実売総額を投入定価総額で除した比率
すなわち、投入定価総額から値引きロスと期末残定価総額を差し引いたもので「換金率」とも言う。決算書上では前期からの持ち越し在庫が加わるが、当シーズン品の歩留まり率計算からは当然、除外する。
 アパレルチェーンの歩留まり率はローカルチェーンで80%前後、ナショナルチェーンで70%前後で、グローバルチェーンでは60%を割り込むケースも見られる。ちなみに、当社のSPAC研究会リテイラーメンバーの昨年度平均は78%、アパレルメンバー平均は71%だった。
 『利は元に在り』と言われるが、歩留まり率は調達原価率が高いほど高くなる傾向が顕著に見られる。ちなみに、原価率が30%以下のメンバー企業の歩留まり率が平均71%に留まるのに対し、35%以上のメンバー企業の平均は82%と格段に高い。素人の顧客でも‘お値打ち’には敏感なのだと肝に銘ずるべきだ。
 歩留まり率を改善するには1)販売計画段階の予算設定、2)商品計画段階のMD展開設計、3)調達段階の数量設定と納期管理、4)配分・補充・店間移動の運用、5)店頭在庫の再編集VMD運用、6)キックオフやマークダウンなどプライシング運用、と多段界の改善を連動する必要があり、政策的な判断や組織の組み替え、調達先の入れ替えが求められる場合もある。個々の技に固執すると全体の流れを狂わせる事もあるから、販売計画からMD展開設計、調達から販売まで在庫が平準してスムースに回転するよう(それは消化歩留まりのみならず作業量と運営コストに直結する)連続した流体制御の発想が必要だ。詳しくは11月10日に開催する『バイヤー/MD育成マーチャンダイジング技術革新ゼミ』で詳説したい。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/09/27 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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