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無在庫ビジネスの要
 シャツ/スーツの「ラ・ファブリック」、シャツの「KEI」、シューズの「キビラ」など、近年台頭しているFDORビジネスの多くがパーソナルオーダー型である事が注目される。
 ひとりひとりのサイズ要求に応えて一品生産する手間は極めて非効率に思えるが、ネットとCAD/CAMが中小の縫製工場まで普及した今日では想像されるほど手間ではないようだ。加えて、パーソナルオーダービジネスには大きな利点がある。それは‘無在庫販売’が成立する事だ。
 もちろん素材のストックは必要だが、トレンド変化が緩慢なメンズのシャツ/スーツ素材、種類が限られるシューズ用の皮革素材などでは素材ストックのリスクは限定出来るし、何より製品在庫に較べれば3分の一程度の資金負担に抑えられる。店舗販売主体(ECは3割強)ではあるがFDORの草分けとなった「メーカーズシャツ鎌倉」も、素材ストックをウィークリーに製品化してSKU単位の販売動向に即応しているから、B2B型オーダー生産システムと見る事も出来る。補給用のサイズ在庫を持たずウィークリーのSKU生産で販売動向に即応する同社のシステムは、店頭品揃え在庫分を除けば理論上は一週間で在庫が回転して行く。
 無在庫販売が成り立っているのはこれらFDORビジネスだけではない。大半を委託/消化取引に依存する百貨店は在庫負担無く売上(歩率手数料)を得ているし、ブランドの在庫をDCに預かってEC受注に引き当てるZOZOTOWNのようなECモールビジネスでも無在庫販売が成立している。ECモールビジネスは百貨店の‘立地’を‘サイト’に‘売場’を‘DC’に置き換えたネット時代のデパートなのだ。チェーンストア業界の基軸流通システムたるVMIにしてもフェイス在庫分はともかく補給分は無在庫販売で、ウォルマートのカテゴリーキャプテン制などその究極の完成形だ。
 何も在庫を買い取って抱えないと商売が成り立たない訳ではない。メーカーやベンダーにせよリテイラーにせよ、誰が在庫を抱えるにしても在庫は回転し続ける限り負担とはならない。B2Bの補給システムもB2Cの注文(販売)と誤差なく連動する限りは健全で効率的たり得る。無在庫販売の要はPBBC(生産〜流通/小売〜消費者)を誤差無く時差を最短化して一貫するシステム精度に在るのではないか。近年のAIやネットインフラ、CAD/CAMの加速度的な革新は嘗ては成り立たなかったマジックを実現してしまう。グローバルSPAやナショナルSPAなどPBBCの誤差と時差が肥大した古典的な流通システムが継続出来るとは到底、考えられない。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/08/29 08:53  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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