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定価で買っている人は三分の一?
 定価販売比率の嵩上げを狙ったバーゲン時期後倒しも深刻な‘衣冷え’による不振在庫の山に潰され、バーゲン時期論争以前より実質セール時期は早まってしまったが、‘衣冷え’というマーケットの反乱を招いた責任はすべて業界に在る。百貨店流通でもSPA流通でもこの四半世紀で運営コストと値引きロスが肥大して業界の調達原価率が10ポイント前後も切り下げられ、その分、消費者の感じる‘お値打ち感’も目減りして購入意欲の減退を招いたからだ
 そんな現実を実証するのが業界の‘歩留まり率’(総て定価で売れた場合に比較しての結果売上比率)で、好調ブランドなら80%以上だが業界の平均は75%程度で、多店舗展開のグローバルSPAでは60%を割るケースも見られる。業界平均の75%というのは、定価で半分売れて残りを平均五割引で売り切った場合で、最終残在庫の処理まで含めば現実に近いのではないか。
 SPACコンベンションでまとめた米国アパレルチェーン上位25社の15年度合計売上は683億ドルで、非公開のフォーエバー21とH&M、インディテックスを加えれば760億ドルほどになる。これに対してTJXとロス・ストアーズのオフプライスストア2社だけで429億ドル(アパレル・服飾だけでも306億ドル)に昇るから、その他のオフプライスビジネスを加えれば米国アパレル流通のオフプライス比率はほぼ三分の一にもなる。米国アパレルチェーンの平均歩留まり率が75%だとしても(そんなに高い訳がないが)正価販売比率は二分の一だから、オフプライス流通も含めた米国アパレル市場の正価販売比率は三分の一という事になる。
 これにはデパート業界やディスカウントストア業界の数字は入っていないが、それらを加えても大きくは変わらないだろう。これがアパレル流通の現実であり、我が国も大差ないものと推察される。こんな歩留まり率で利益を確保出来るよう原価率を切り詰めた商品に‘お値打ち感’など期待すべくもなく、‘衣冷え’は深まるばかりだ。既存秩序に浸って来たギョーカイが根底から流通の仕組みを‘革命’しない限り春は来ない
 古典的な百貨店流通に加えてSPA流通まで行き詰まる中、今日のSPACサマーコンベンションでは日米ファッション流通のギャップやECビジネスとの格差を検証し、FDORなど画期的に低コスト/低ロスで‘お値打ち品’を供給出来るポストSPAのビジネスモデルを提唱したい。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/08/25 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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