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薄利多売と交叉比率
 昔から商売成功の秘訣は‘薄利多売’と言われるが、『厚利では少量しか売れないが薄利だと大量に売れる』という表面的な意味の他に『薄利でも多回転すれば巨利が得られる』という経営の神髄を語ったものと受け止められる。これが所謂「交叉比率」の概念だ。
 「交叉比率」は商品資本の期間生産性を現す指標で、一般に「実現粗利益率×年間の商品回転数」で算出する。‘薄利多売’とは『利幅が薄くても在庫が高回転すれば莫大な利益が得られるから、薄利なお値打ち価格にして高回転を狙え』という教訓なのだろう。八百屋は利幅は薄いが毎日のように回転するから、廃棄損を差し引いた利幅を10%と見ても×180回転(2日で一回転)で交叉比率は1800%にもなる。なんと元手が一年で18倍になる計算だ(もちろん、家賃や人件費などの運営経費がかかるが)。ちなみに食品スーパーやコンビニの交叉比率は1000%を超える。
 これが年間2+2シーズンのコレクションブランドになると実現粗利益率60%弱×2回転前後で交叉比率は120%にも届かないし、セレクト大手のユナイテッドアローズも50.8%×3.0回転で交叉比率は150%強に留まり、ファストなはずのH&Mも57.0%×3.5回転で交叉比率はようやく200%に届くに過ぎない。これがODM型のカジュアルチェーンになると45%×12回転で交叉比率は500%台に跳ね上がるし、原始的なキャリー型ファストSPAなら食品スーパー並みに1000%の大台に乗せる事も可能だ。これが‘薄利多売’で、高付加価値な自社開発の一方で高回転なODM調達商法も存在する。
 ちなみに上場アパレル専門店の平均交叉比率は年々、商品回転が低下して劣化しており、09年度の238.8%(粗利益率50.6%×4.72回転)から15年度は187.7%(粗利益率51.4%×3.65回転)と八掛け以下に落ちている。
 交叉比率を確実に高める方法は、1)毎週など投入頻度を高め、2)在庫の奥行きを持たず補給もせず売り切り御免に徹し、3)SKU単位に自動店間移動で振り替え、4)一定期間(最大4週)経過して残っている在庫は処分店舗に移動して値引きして売り切る。これは消化歩留まりと在庫回転のどちらも高める定石で、結果として交叉比率を最大化できる。「ZARA×しまむら+α」といったMD&DBプロセスと言ってよいだろう。


◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/07/27 09:07  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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