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言い値で完売の逆臨界商法
 昨日の日経MJのコラム「ライフスタイル」は『客殺到、3店が臨時休業』と見出し、高級ランドセルブームで鞄工房山本のネット在庫が一時間で瞬間蒸発し、実店舗に顧客が殺到して臨時休業に追い込まれた事を報じていた。これほどの騒ぎは例外としても、毎年のようにランドセル受注の解禁日?になると土屋鞄などに‘ラン活’顧客が殺到するのが季節行事になったかの感がある。小学校新入生が毎年、減少する中も親に祖父母も加わって‘ラン活’が過熱する情況は何を意味するのだろか。
 世には物が溢れてセールが日常化する中、何で高級ランドセルだけが‘言い値’で完売してしまうのか。その秘密が「逆臨界ビジネスモデル」(私の造語です)なのだ。
 定価で売れるか値引きしないと売れないか、即完売してしまうか時間を要するかは、すべて需給で決まる。需要より供給が多いと値崩れし消化も手間取る一方、需要を供給が満たせないと‘言い値’で完売してしまう。旬の生鮮食品などを思って頂けば容易に理解されよう。だから農家や漁師は日々、市場の入荷量と競り値を見て育成を早めたり遅らせたり、捕る魚種を変えたりするのだ。
 衣料品や服飾品は類似品が氾濫していつも値引きしている印象があるが、作っても売れない、海外産地とのコスト競争に勝てない、といった情況が長年続くと工場の廃業や倒産、職人の離職が進み、ついには作りたくても僅かしか作れないところまで衰退してしまう。つまり供給が需要を満たせなくなってしまうのだ。これが‘供給の逆臨界点’で、ここまで来ると『生産量が販売量を決める売り手市場』が成立する。国内生産高級ランドセル市場の完売現象は‘供給の逆臨界点’到達ゆえに生じているのだ。
 そんな旨い話は滅多に無いと思われるかも知れないが、慢性的供給過剰の業界でも探せばチャンスは少なからず転がっている、そんな逆臨界情況を探して画期的ビジネスモデルを仕掛けた実例が、恐らくランドセル業界の情況にヒントを得たと思われる「ココマイスター」の高級ビジネスバッグ、久しく大手三社の寡占状態が膠着した国産時計業界の隙間を付いた「Knot」の機械式腕時計ではないか。
 「ココマイスター」の高級ビジネスバッグなど明らかにラグジュアリーマーケットを意識したもので、国産としては!!というプライス(〜税込50万円)が堂々と付けられている。「Knot」の機械式腕時計AT-38は逆に、こんなに安くていいの?と思わされるほど控え目なプライス(税抜45,000円)が付けられている。どちらも‘言い値’が通って生産量が販売量という売り手市場が成立している事には変わりない。
 同質化と値崩れに悪戦苦闘しているギョーカイの方々は、こんな「逆臨界ビジネスモデル」を是非とも参考にすべきと思うが如何だろうか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/07/21 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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