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単品ブランドの勧め
 ファッションブランドたるものコーディネイトを提案しなければならないと思い込む人が多いのか、世に溢れるブランドの大半はコーディネイトブランドで、今や単品ブランドの方が珍しい。ファッション化以前の60年代まではニット/カットやブラウス、パンツやスカート、ドレスやコートなど単品ブランドの方が大勢で、80年代までは百貨店に‘単品平場’というのが在って「○○ブラウス」とか「○○ドレス」といったアパレルメーカーも健在だった。そんな単品ブランド達が次々と消えて行ったのはDCブランドブーム、インポートブランドブームを経てバブルが崩壊した頃からだったと記憶している。
 業界の誰もがコーディネイトを志向する昨今だが、果たしてファッションブランドが皆、コーディネイトである必要があるのだろうか
 コーディネイトを訴求すればブランドイメージを訴求し易く客単価も売上も増えるという理屈だが、逆に見ればブランドイメージが拡散しがちで在庫が積み上がるリスクも大きい。毎シーズン数百も展開されるランウェイを見れば明らかだが、コレクションを構成するスタイリングとMDを組めるデザイナーは数十人に一人もいない。新米デザイナーのコレクションなど主力単品の完成度も疑わしく、ランウェイを構成する力量など到底、期待出来ない。
 スタイリング提案を着回しとMDに展開するだけでも人並みはずれた技量を要するのに、起点となるスタイリング自体が魅力的で、かつMD展開したアイテムがそこそこ消化する商品力まで期待するとなると、百人千人に一人の英才か天才にしか敵わぬ神業だ。そんな大穴を狙って在庫の山を作るより、得意アイテムに集中して手堅く稼ぐ方が賢明ではないか。
 コーディネイトにはもう一つ致命的な欠陥がある。それは多アイテム展開すればするほど物づくりの現場から離れてしまう事だ。かつての単品アパレルはアイテムに特化した工場と組んで年間の稼働率を確保し、ともにパターンや縫製仕様のブラッシュアップに励んでいた。当然、単品の完成度は高くなるが、コーディネイトブランドが主流になるに連れ単品ブランドの付加価値は削がれ、工場はスポット発注に振り回され稼働率も工賃も維持出来なくなっていった。その一方、欧州の単品工場は自らブランドを立ち上げて販路を開拓し、今日のファクトリーブランドに発展して行った。自らの技で稼働率を維持する単品MDを組める事が大前提であったに違いない。
 完成度と工場稼働率、生産効率と流通効率を考えればコーディネイトブランドより単品ブランドが優位である事は疑う余地もないが、コーディネイトブランドの箱やコーナーが並ぶ店舗流通では単品ブランドの販路は限られていた。それが近年のEC拡大とオムニチャネル化の中、パーソナルなレコメンドやキュレーション編集が高度化するに連れコーディネイトブランドである必要が薄れ、単品ブランドが再評価されだした。
 工場の技を活かし稼働率を高めるには単品ブランドの直販がベストで、ファクトリーブランドの今日的進化系であるFDOR(FactoryDirect OmniChannel Retailer)の主力となりつつある。そろそろコーディネイト至上という錯覚から醒めてもよいのではないか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/06/28 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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