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服の価値とテキスタイルの価値
 洋服の価値はクリエイション半分、ユーティリティ半分だと思う。クリエイションとは創り手側が生む価値、ユーティリティとはコーディネイトや着こなし着崩しといった使い手側が生む価値だ。和服ではクリエイションのほとんどがテキスタイルだからクリエイション3割、ユーティリティ7割ぐらいのバランスだろうか。小袖と襦袢や半襟、帯や帯揚げの色柄合わせから帯の高さや多様な結び方、衣紋の抜き加減や合わせの深さなど、着こなし着崩しで粋や意気を競う様は正にストリートカルチャーだ。個人的には鈴木春信が描く小股の切れ上がった0脚スレンダーなユニセックススタイルがいっち秀逸だと思う。
 洋服のクリエイションはテキスタイルとアパレルデザインが半ばすると思うが、繊研新聞が毎年調査している服飾専門学校卒業予定者に対する「就職意識調査」の今年度結果に拠れば、「活躍したい業種」でアパレル関連が計1400票以上を集めたのにテキスタイル関連は60票に留まり、「希望する職種」でもアパレルデザイナーの540票に対してテキスタイルデザイナーは「その他」95票の何処かに埋もれる有様で、服飾専門学校生には『クリエイションにおいてアパレルデザインとテキスタイルデザインは対等』という認識はほとんどないようだ。テキスタイルデザイナーは多摩美、武蔵美、造形大など美大系が多いから服飾専門学校側も領域外と見ているのかも知れないが、テキスタイルのクリエイションを欠いてはアパレルのクリエイションは卓上のお遊戯に終わってしまう。学校側も学生側も認識を改めるべきだろう。
 テキスタイルの軽視は専門学校生や駆け出しデザイナーの‘試作品’にも顕著に見られる。先日、ヒカリエホールのJAFICのイベントで見た‘試作品’群もニットを除けばがっかりするものだった。デザインに注力しても素材が凡庸で、デザインと素材の意匠、物性、風合いが相乗していない。なんて平凡なテキスタイルを使っているのだろうと訝ってしまうが、聞けば日暮里のアウトレットや街の生地店で買っていると答える若者がほとんどだ。悪いが、それでは初めからクリエイションの半分は捨てている。デッドストック調やリメイク風ならともかく、クリエイティブであろうとするならテキスタイルも相応にクリエイティブでないと意図する効果は得られないし、意匠や風合いに凝った生地に出逢えば創作意欲も触発されるというものだ。
 ランウェイやアパレルの展示会に潜り込む服飾系の学生は多いが、テキスタイル展を覗く学生は限られる。ましてやプロのデザイナーのように産地の工場まで入り込む学生がどれほど居るのだろうか(プロのデザイナーも行かなくなったが)。そこまで行かなくても、開発力のあるテキスタイル・コンバーターの展示会に出入りして感性を磨き、多少のお手伝いを引き受けてシーズン末期の残端切れを下げ渡してもらえるようになれば、もっとクリエイティブな洋服が作れるかも知れない。おせっかいかも知れないが、私が服飾系の若者ならそうする。テキスタイル業界側ももっと積極的に学生や駆け出しのデザイナーに門戸を開き、テキスタイル・クリエイションの価値と醍醐味を伝える努力をするべきだ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/06/24 09:30  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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