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ブランドは顧客とともに
 このほど完成した当社の「16SSブランドツリー」(レディス/メンズ計3800ブランド収録)を一覧するとファッションブランドのライフサイクルが見て取れる。新ブランドは投入数が限られる上に3〜4年で消えて行くものも多く、どのゾーンでも前世紀から続くブランドが大半で新陳代謝は極めて限られる。そんな情況になる要因をどう見ればよいのだろうか。
 最大の要因は少子高齢化と経済の停滞によるファッション消費の衰退で、新ブランドの離陸率が極めて低い事だろう。近年は店舗投資も嵩み不動産費や在庫の負担も大きくなっているから、アパレル企業の収益力低下もあって巨額の開発投資が水の泡と消えるリスクを負担し切れなくなっている。ゆえに、新ブランドと言っても既存ブランドの複合や編集、雑貨や飲食の付加といった‘派生ブランド’が主流になり、顧客の付いた既存ブランドの延命に注力する事になる。
 既存ブランドの‘延命’で問われるのが『顧客とともに歳を取るか、若い顧客を取り込むか』の選択だ。長く続いているブランドでは‘若返り’が必定とされるようだが、下手にMDを若返らせては既存顧客の離反を招きかねないし、顧客とともに歳を重ねてはいずれ尻窄みになってしまう。難しい選択だが、長く続いて収益も保っているブランドに共通するのは『顧客とともに歳を取る』という選択で、80年代の若者向けDCブランドが30数年を経てシニアブランドに成熟して続いている例も少なくない。
 新規顧客の開拓コストは既存顧客の維持コストより桁違いに嵩み、長く続く顧客のブランド・ロイヤルティは想像以上に強いから、下手に若向けに振って既存顧客の離反を招くリスクは極めて大きい。それでも30年以上も続けば顧客の多くはお洒落に熱意を失う高齢(そうならない方もいるが)に達してしまうから、そうなる前に何らかの‘若返り’を図る必要がある。ブランド本体を若返らせるのはリスクが大きいから若向けのセカンドラインなどを投入する事になるが、選択枝は二つに分かれる。
 ひとつは既存ブランドとは別の販路や売場で新たな顧客を開拓する選択、ひとつは既存ブランドと同じ売場で既存顧客の関連客を取り込む選択で、前者では‘半世代’若い新規客を狙うが、後者では‘一世代’若い子世代を取り込む親子(母娘)訴求の成功例が多い。
 ブランド年齢がそこまでは至らない間はリスクを冒して若返るより『顧客とともに歳を取る』選択が正解で、顧客の年齢上昇とともにデリケートにパターンやフィットに手を加えTPOの変化に対応すべきだ。ブランド名を挙げる事は憚られるが、一時、人気を博したブランドが潮が引くように凋落したケースは皆、顧客とともに歳を取らず同じ年頃の入れ替わり客を追って飽きられた結果と思われる。50年に渡って業界の盛衰を見て来た識者の‘知見’と受け取ってもらいたい。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/06/16 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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