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SPAからFDORへ
 かつては効率的な流通システムとして注目されたSPA(店舗型ブランド直販事業)もオーバーストアや運営コストとロスの肥大によって必ずしもお買い得な流通システムではなくなり、中には極端な低コスト調達の‘紛い物’を二重価格で上手に売りつけたり極端な値引き販売でファストな消化を図る乱暴なビジネスモデルも横行するに至り、価値と価格に対するマーケットの信頼が失われて値崩れが常態化し、事業に関わる人々の生活まで危うくなって来たのが昨今の現実だ。
 かつては80%以上だった歩留まり率(当初価格投入総額に対する実現売上総額の比率)も多くの企業で70〜75%に下がり、グローバルSPAの中には値引き販売が常態化して60%前後と推計される企業さえ在る。利益を確保するにはその分、調達原価率を切り下げざるを得ず、年々、原価率が切り下げられて‘お買い得感’と‘価格信頼感’が損なわれて行った。
 かつては33〜35%だった百貨店流通SPAの原価率が23〜25%に切り下げられ、00年当時は35〜38%だった駅ビル/SC流通SPAの原価率も29〜33%に切り下げられ、中には20%を切る原価率で値引き販売を常態化する業者まで闊歩し、‘低価格SPAの覇者’とまで言われたユニクロさえ高コストな海外展開に偏って低コストなECの拡大が遅れ値上げを繰り返して顧客を失望させるに及び、もはや小手先のMDや編集的な業態開発では壁を超えられないところまで来てしまった。
 その一方、高コストで在庫が偏在する店舗販売を最小限に抑え低コストで在庫回転も速いECを軸に工場直の流通体制を確立して画期的に‘価値ある物’を顧客に提供せんとするオムニチャネル直販ベンチャー(「FDOR」FactoryDirect OmniChannel Retailerは私の造語です)が次々に台頭し、少なからぬスタートアップ企業が急速に売上を伸ばす今、ファッション関連の流通システムは抜本から革命の刻を迎えている。
 そんなSPA業界がマーケットの支持を回復するには‘商物一体’という店舗販売の呪縛を脱しOEM/ODMの誘惑を断って工場直調達に徹しFDORへと変態するしかないが、どう訴えても業界の反応は鈍い。このままではブランド廃止や大量退店が広がって業界は断末魔を迎え、多くの関係者が路頭に迷う事になる。ならばFDORベンチャーの台頭という現実を突きつけて覚醒を強いるしかないだろう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/05/25 09:21  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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