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ECの返品率はどこまで上がるの?
 毎年三月末のSPAC研究会はECと店舗を連携するオムニチャネル戦略をテーマに開催して来たが、そのコアな部分のブレイクスルーもともかく、ディティールでも幾つか気になる変化があった。そのひとつが返品率の増加で、前年の3.6%から4.6%と1.0ポイント上昇した。
 アパレル通販の返品率は欧米では20%(靴は30%)前後と言われるが、我が国では刻々と買い気を煽るTVショッピングは欧州並みでもカタログ通販で10%前後、ECでは3%前後と低率に収まって来た。その要因は欧米消費者に較べて日本の消費者は遠慮がちで返品を躊躇する人が多いからとされて来たが、その認識は間違っていると思う。大手カタログ通販業者こそ返品に寛容だが、多くのアパレルEC業者は顧客都合による返品を拒否して来たからだ。
 SPACメンバー自社サイトの平均返品率は2013年の2.6%から14年が3.1%、15年が3.6%、16年が4.6%とジリジリ上昇して来たが、この間に返品を容認するサイトの比率も57.5%から80.1%に拡大しており、平均返品率の上昇はそれを反映したものと推察される。事実、この間の最大返品率は8〜10%から動いておらず、返品を容認すれば最大10%まで上昇すると見るべきだ。
 それでも欧米に較べればまだ半分ではないかと思われるかも知れないが、『30日間返品サイズ交換・送料無料』を謳って急成長している靴のEC「ロコンド」では初期の20%弱から25%、30%と返品率が上昇しているから、『返品無料で買ってから選ぶ』という購買スタイルが認知されて売上が伸びるほど返品率も高まって行くというアイロニーが指摘される。さすがにアパレルでは靴ほどの返品率にはならないと思うが、『返品無料で買ってから選ぶ』という購買スタイルが一般化すれば15%に迫る日が来るかも知れない。
 返品率はモラルの問題ではなく購買スタイルの‘常識’に準じているだけで、‘常識’が変れば返品率も変わって行く。顧客利便を競いながら返品率を抑制するには店舗と連動して試着の機会を増やすなどオムニチャネルな運用が不可欠だが、決定打は全身の3D採寸データをID化して業界で統一運用する事だと思う。アマゾンID決済みたいに自分のサイズデータIDをワンクリックで入れれば最適サイズがリコメンドされ、ECサイト側には個人データが残らないという運用が実現すれば、アパレルも靴も返品率が抑えられ、売り手も買い手もウインウインになるのではないか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/04/27 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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