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粉飾の構図
 ‘粉飾決算’と聞けば司直の摘発を招く企業犯罪と大げさに受け取る人も居られようが、一応適法でも経営の実態を著しく誤解させたり、意図して違法スレスレの粉飾を繰り返す企業も珍しくない。大なり小なり決算に‘粉飾’は付き物なのだ。架空売上や循環取引といった悪質な確信犯は別として、一般の企業が日常的に行っているのが以下の四項であろう。
1)子会社/関連会社との取引における利益の供与または収奪
2)投資やのれん代の償却、店舗の撤退などに伴う除却損の前倒しまたは後倒し
3)期末在庫の評価替えや納品の前倒しまたは後倒し
4)経費の圧縮や仕入れ支払いの値引きなど強制的な予算達成
 1)は製造業の親会社と販売子会社、本国の本社と海外子会社、核テナント親会社と商業施設子会社などで一般的に見られるもので、国内では摘発される事は珍しいが海外の税務当局が摘発して国際裁判になる事もある。許容範囲と言うには経営の実態と決算が乖離し過ぎ、株主利益も損なう問題行為だ。
 2)は税法上、許容される範囲で計上を恣意的に前後するもので、現業が儲かっている期に償却や除却を集中し儲からない期には圧縮するという極めて常套的な会計判断だが、経営の実態を見え難くする事には変わりないし、公平な納税義務という点でも問題がある。
 3)も税法上は指摘される事は少ないが、最も効果的に経営実態を粉飾出来る会計処理だ。通常は期末在庫の簿価を実勢価値に従って評価替えするが、仕入原価を簿価のまま計上したり来期販売用商品を前倒し投入すれば利益を水増し出来る。売上が低迷しているのに利益を維持している決算など、不自然に在庫が積み上がっていれば要注意だ。悪質なのは不振在庫を評価替えも計上もせず何期も持ち越すケースで、経営実態は決定的に粉飾される。商社や納入業者に在庫を抱かせれば隠蔽出来るが、やがては吐き出さざる得なくなる。
 4)は‘予算主義’と言うべきもので、売上や粗利が予算を割っても仕入れ代金や経費を強制的に抑えて利益予算に着地させるという一般的に横行する手法だ。税法上はともかく労働基準法や下請法に抵触しかねず、社内や取引先が疲弊して萎縮のスパイラルに陥りガバナンスも崩れてしまうから、一期限りの緊急退避処置に留めるべきだ。
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 こうして見ると上場企業の決算と言えども‘粉飾’を疑ってかかるしかなく、非上場企業ともなれば恣意的に‘粉飾’されているものと達観するしかない。長年に渡って国内外アパレル/流通企業の決算を見て来た研究者の偽らざる実感だ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/04/25 10:03  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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