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セルフサービス神話の崩壊
 今朝の日経はイケア・ジャパンが今年中にECを始める事を報じていたが、遅きに失した感は否めない。IKEAは日本国内に8店の大型店と熊本の実験的ショールームストアを展開しているのみで店舗にアクセス出来る顧客は限られており、‘公式サイト’と見紛う購買代行業者のECサイトが氾濫して混乱を招いて来たが、ようやく顧客の不便が解消される事になるのだろうか。
 イケア・ジャパンはこれまで『店舗に来て顧客に購買労働を分担していただく』という理念にこだわって来たが、購買代行業者のECサイト氾濫と顧客の要望を無視出来なくなった事に加え、15年6月9日に本社がEコマースの積極拡大によるマルチチャネル戦略(なぜか‘オムニチャネル’とは言っていない)を発表した事が背景にあると思われる。他国では11年からEコマースを始めて現在、13カ国に15の顧客向けDCを設置して『店舗販売比率は95%』と公表しており、カナダでは1000坪サイズのショールームストアによるストアピックアップ型Eコマースの実験も始めているから、日本でのEコマース開始も時間の問題だった。
 IKEAがEコマースに出遅れた要因はスウェーデンのコーペラティブ文化を背景とした『顧客が労働を分担する分、割安に売れる』という理念で、製品の組み立てはもちろん、店舗でラックからピッキングし持ち帰るという労働の分担が部分的に崩れる分、Eコマースでのコストが店頭販売を上回って価格を統一出来なくなるという‘杞憂’が在ったと推察される。先行する各国で拡販力とコスト優位を実証出来たからこそ全社方針となったのだろう。
 IKEAに限らず流通業界では『顧客が労働を分担する分、割安に売れる』という‘セルフサービス神話’が未だ健在で、スーパーマーケットから倉庫型ディスカウントストアや量販SPAまで‘顧客の労働分担’が定着しているが、これも‘神話’に過ぎない。陳列棚からのピッキングもレジでのチェックアウトもプロとアマでは効率が桁違いで、顧客の労働をサポートする作業も必ず発生するから、‘買い手の労働分担=売り手の経費削減’とはならないのが現実だ。スーパーマーケットのセルフチェックアウトレジが一時のブームで終わり、スキャニングはチェッカーが行って支払いだけ顧客が行うセミセルフに着地したのはその典型例だ。
 ウェアハウス陳列のユニクロなどでも、セルフサービスで顧客が選んでピッキングし試して崩れた陳列を逐一、整理・補充する作業が不可欠だから、‘買い手の労働分担=売り手の経費削減’とはまったくならない。下手に顧客に分担してもらうより、売場はサンプルだけのショールーム陳列にして、プロがフリーロケーション運用やマテハンを駆使して格段のピッキング効率を発揮するDCから顧客に直送するか、レジ後方の自動ピッキングラインからクイック・ピッキングで顧客に渡すか、どちらかに割り切る方がトータルコストは絶対に低くなる。
 モバイル軸でオムニチャネル・ショッピングが急進する中、古典的な‘セルフサービス神話’の幻想を捨て、売る側と買う側の労働分担もゼロから再構築すべきではないか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/04/06 11:35  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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