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お客が見えていないのでは?
 ‘衣冷え’が深まる今春の店頭を見ていると、『この店の顧客って、こんな好みだったっけ?』と訝る打ち出しが目に付く店がチラホラある。売れ筋を追って同質化するボリュームゾーンも問題だが、店のアイデンティティを投げかける打ち出しが顧客の‘好み’から乖離しては顧客が混乱するし、2〜3シーズンもそんな事が続けば長年の顧客も愛想が尽きてしまうだろう。
 顧客の‘好み’とは長年かけて店と顧客がキャッチボールして来たコンセンサスであり、顧客が顧客で在り続ける‘お約束’のようなものだと思う。それはトレンドへの感度と伝統へのこだわりの折り合いだったり、見た目のシルエットが着心地を推察させる‘ユーティリティ’の一致だったり、価格と品質のバランスだったりするのだろうが、店の側が勝手に‘お約束’を変えるには相当の覚悟を要する。03年9月に伊勢丹新宿本店が「男の新館」を「メンズ館」に改称し、従来の顧客を切り捨てて大変貌し今日の圧倒的人気を築いたのは例外的‘事件’であったが、それだけの覚悟と戦略があって断行する大博打なのだ。そんな‘お約束’違えが覚悟も戦略もない成り行きや勘違い、果ては社内の組織力学に流された結果だとすれば、ガバナンスの鼎を問わざるを得ない。
 顧客の‘好み’から離反した打ち出しは、恐らく海外情報などに依存して業界をリードしようとしたスタンドプレイの弊害だと思うが、SNSが世界中に氾濫しBC交錯してトレンドが創られる今日、情報特権スノブを自認するファッションメディア関係者などの享けを狙っては顧客と乖離してしまう。顧客とのキャッチボールを基盤に成長したセレクトショップなどアパレル小売業が顧客ではなくギョーカイの側を向いて商品開発をしているとしたら、遠からず落日の運命は避けられないだろう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/03/25 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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