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仁義なき侵略?
 今月末、銀座東急プラザに開業するロッテ免税店に続き、高島屋はサムスングループのホテル新羅、全日空商事と合弁で来春、新宿店の11階に同様な空港型免税店を開くそうだ。出資比率は高島屋60%、ホテル新羅20%、全日空商事20%で、三越銀座店8Fに開業したジャパンデューティーフリーファソラ社の三越伊勢丹出資比率が27.5%に留まるのと較べると高島屋の主導権が際立つ。新宿店の売場面積は2800平米、初年度売上予算は150億円、二号店は大阪を予定と発表されている。
 銀座東急プラザの8〜9Fに4420平米で開業するロッテ免税店の初年度予算は2000億ウォン(約200億円)で、17年度中に東京と大阪に新たな店舗を計画している。ロッテ免税店はスイスのデュフリー、米国のDFS(LVMH傘下)に続く第三位の免税店で、韓国内に加えてジャカルタの空港店と市内店、グアム空港店、14年9月開業の関西空港店(300平米)を展開している。
 空港型免税店は市内免税店が消費税しか免税にならない(TAX FREE)のに対して関税や酒税、たばこ税も免税になる(DUTY FREE)のが強みで、関税率の高い皮革製品や香水などは市内免税店よく格段に安くなる。開設には税関による免税店免許の取得が必要で、実績と政治力が不可欠と言われる。
 空港型免税店が市中に多店化すれば二つの影響が生じる。ひとつは、これまでTAX FREEでインバウンド特需に潤っていた市中小売業の売上が奪われる事。もうひとつは、各ブランドのジャパン社や代理店が個店帳合でコントロールして来たブランド品の流通が綻びかねない事だ。
 グローバルブランドの流通は‘グローバル’とは言っても国別に流通体制や価格が異なるローカルマーケティングのミックスで成り立っているが、国の際を超えて展開される空港型免税店チェーンに対しては本社の専門部門が一括して対応せざるを得ず、市中に多店化すればローカル体制の価格や個店帳合(テリトリー規制)が綻んでしまう。
 ローカル調達では本社調達の外資免税店チェーンに対抗出来ないから、外資チェーンの導入や合弁での運営が志向される事になる。外資チェーンと組まなかった三越銀座店の空港型免税店ではケリング系のブランドが中核を占めたが、銀座東急プラザのロッテ免税店にはLVMH系の著名ブランドが揃うかも知れない。高島屋が世界7位のホテル新羅と組むのなら、阪急阪神や大丸松坂屋はデュフリーやDFSと組むのだろうか。三越伊勢丹とて今後の出店では外資チェーンと組むやもしれない。
 そんな力ずくのバトルが広がれば、インバウンド特需で潤って来た市中免税店の売上は潮が引くように消えて行くだろうし、グローバルブランドの個店帳合流通は越境ECの急増も重なってジリジリと綻んでいくのではないか。外資免税店チェーンによるブランド本社調達は品番を仕分けたりエクスクルーシブ品番に限定したりとローカル流通への打撃を避ける配慮がなされるだろうが、越境ECの方は大小さまざまな業者が入り乱れての仁義なき乱戦にならざるを得ず、グローバルブランドのローカル流通体制は遠からず抜本からの再編が避けられなくなる。
 それは百貨店などローカルバイヤーの商慣習も抜本から崩し、個店帳合に囚われないグローバル&セントラルなエクスクルーシブ・バイイングを競う段階に移行せざるを得ない。それが出来ないならマイナーなローカルバイヤーに都落ちする運命が待っているだけだ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/03/24 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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