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「下町ロケット」の熱狂と現実
 昨夜の「下町ロケット」最終回は急展開して絵に描いたような正義の勝利に終わったが、人々の共感を盛り上げる池井戸潤作品の出来の良さはともかく、現実のビジネスではこんな展開はまず有り得ない。帝国重工の役員会の場面など、男達の権力闘争力学が異なる決着をもたらすのが現実の社会だ。正義や真理が通るなら戦争も倒産も不祥事も避けられるはずだが、現実の社会はそうではない。だからこそ「下町ロケット」は視聴者の熱い支持を得たのだろう。
 2013年の夏を熱狂させた「半沢直樹」(銀行員)の技術者版とも言うべき同じ池井戸潤作品だが、半沢直樹の『倍返しだ!』的決め台詞は何だったのだろう。強いて言うなら『100%を目指す技術者魂』あるいは『何時か達成する夢が在る』だったのだろうか。
 現実のビジネスでは夢や理想や技術を抱いていても組織力や資金力、そして政治力や地の利・時の利(早い話が‘運’)に結果は左右されてしまうし、ベストを尽くしたつもりでも何時の間にか「マーフィーの法則」に取り憑かれてしまう事も多い。「女神の後ろ髪」と「マーフィーの落とし穴」の狭間を上手く駆け抜けようとすれば、運頼みと危機管理の狭い選択枝に追い詰められるから、結局は想いのままに突撃して勝利か玉砕かの結末を求めてしまうのが日本的経営判断なのだろう。
 「下町ロケット」も玉砕ひいては倒産という結末も有り得ただろうが(その確率の方が遥かに高かったと思う)、信念のままに突撃した結果であれば男らしく果てればよいという「葉隠れ」的精神論が見え隠れする。‘最先端ものづくり技術’をテーマとしたドラマでありながら、視聴者を引きつけたのは「葉隠れ」的武士道かはたまた年末恒例の「忠臣蔵」的集団活劇だったのではないか。TVドラマとしては楽しめたけど、現実のビジネスで『ものづくり神話』だけで‘バンザイ’突撃するのはアナクロに過ぎると思う。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトをリニューアルしました
 2015/12/21 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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