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販売員とは何か!
 「ファッション販売員協会」が設立されるそうだ。販売職の社会的地位向上と女性の社会進出を支援する事を目的に、ブランドビジネスや大手アパレル、百貨店や人材派遣業の有志企業が発起人となり、一般社団法人として来年四月の設立を目指している。
 主旨にはもちろん賛同するが、駅ビルデベなどが手掛けている「ロールプレイイングコンテスト」みたいな啓蒙イベントで終わっては販売員の地位向上には繋がらない。なぜなら多くの場合、「販売員」の実態はかなりの部分が‘店頭物流作業員’だからだ。実際、販売員の一日を追って分単位に業務を検証してみると、駅ビルやSCのファッション店では、ほぼ過半は品出し、品戻し、陳列整理、品探しとピッキング、在庫管理などの‘物流作業’で、‘接客業務’は一割前後に留まる。
 量販的な大型店ではストア自体が物流倉庫みたいなものだから‘物流作業’が大半を占めるのは想像がつくが、百貨店でも在庫探しに後方へ行った販売員がなかなか帰って来ない時など‘物流作業’負担を実感させられる。在庫探しに売場を離れている間は接客不能で、販売技能を発揮しようもない。在庫管理とピッキングも熟練したプロがやれば速くて正確なのは言うまでもなく、これも‘専門技能’として正しく評価されるべきだ。
 販売員が接客販売の専門職として店舗運営を分担し、その成果が正しく評価されるには、‘物流作業’から解放されるべきだが、経営者の意識はその次元には遠い。キャリアや職能によって‘販売職’と‘在庫管理職’に分業し、それぞれ評価するのか、あるいは在庫管理や物流作業は専門サービス業者にアウトソーシングするのか、業務プロセスを検証して再構築する事が出発点となる。
 ‘販売職’とて接客だけが技能ではない。売場と後方ストック、DCや近隣店舗の在庫を掌握して顧客の要望に即応する‘在庫管理技能’と‘デジタル機器操作技能’も不可欠だ。前者には天候や販売動向と在庫状況を掌握して販売し易いよう陳列分類や打ち出しを組み直す‘営業VMD技能’、後者には会社の端末だけでなく顧客のスマホやタブレットの操作をサポート出来る‘モバイル端末操作技能’も含まれる。
 ‘接客技能’とて‘おべんちゃら’や‘おもてなし’が求められている訳ではない。顧客の要望、今求められる接客プロセスと時間的制約を一瞬にして掴み、顧客の求めるペースと手順で対応するのが第一歩だ。衣料品では顧客の体型とファッションタイプ、求めているアイテムや着用シーンを逸早く掴み、顧客の気力体力(テンション)を見て接客プロセスを進める。‘フィッティング’は素材の物性や洗濯対応に加え、スタイリングのユーテイリティや着用シーンによるフィットの匙加減(サイズ感や丈感)が問われる。デザイン的なトレンドだけでなくユーティリティ(着こなし着崩し)のトレンドを掌握していないと顧客の期待と擦れ違ってしまう。‘お直し’では素材の物性やパターン、縫い代の余地を見て適切なアドバイスが必要で、採寸結果を顧客のお直し歴(データベース化してますか?)と照合してミスを防がねばならない。‘精算’‘包装’のクロージングは‘速くて安心’が第一義で、包装やレジ処理に手こずるようでは問題外だが、マニュアル化や個々人の技術的習練に加えてICタグやモバイル端末処理など精算システムの革新も問われよう。
 『職制職能をどう位置付けるか』『技能と成果をどう報酬に反映するか』『キャリアステップをどう設計するか』『報酬を継続的に上昇させて行くには会社の仕組みをどう変えて行くべきか』を問う事なく「販売職の地位向上」を訴えても夢幻で終わるしかない。「ファッション販売員協会」が従来の啓蒙活動に終わらず、経営層まで巻き込んで抜本的な業務改革を進めて行く事を願う。
 2015/11/26 09:17  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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