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ただで届くと思うんじゃねぇよ!
 『ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ!・・・』とスタートトゥデイの前澤社長がつい本音でツイートして炎上しちゃった事件はまだ記憶に新しいが、正直言えば私も同感だ。そんな宅配業界の疲弊をリアルに伝える良書が横田増生氏の新著『仁義なき宅配』(小学館刊)だ。
 横田増生氏と言えばターゲット企業への潜入取材で実態を暴く社会派ジャーナリストとして注目の人で、『ユニクロ帝国の光と影』(11年3月刊行)ではユニクロが出版元の文芸春秋社を名誉毀損で訴え、2億2千万円の損害賠償と出版差し止め、発行済み書籍の回収などを求めて裁判を起こしたが、14年12月9日に最高裁がユニクロの上告を退け、ユニクロ側の請求を退けた二審、東京高裁の判決が確定している。巨額の損害賠償を請求してジャーナリズムに圧力をかける‘恫喝訴訟’と批判を浴びたが、全面敗訴によって却ってブラックな労働環境があったと認識される結果となった。
 そんな社会派ジャーナリストの横田増生氏はアイオワ大学でジャーナリズムを専攻した後、物流業界紙の記者、編集長を務めた物流通で、新著『仁義なき宅配』では氏のキャリアが遺憾なく発揮されている。新著ではヤマト運輸と佐川急便に潜入取材しているが、中でもリアリティがあったのがヤマトの付加価値戦略の要たる「羽田クロノゲート」に夜勤アルバイトとして一ヶ月間、潜入したレポートだった。
 氏が担当したのはクール宅急便の仕分けラインだが、業務量と効率優先の人員配置のギャップから温度管理が疎かにされている実態を日々の作業体験から子細にレポートしている。加えてセールス・ドライバーに横乗り同行しての取材では配達時間帯指定と不在による再配達がドライバーに長時間の苛重な労働を強いている現実、下請業者の幹線輸送トラックに横乗りしてのレポートではトラック運転手の給与水準の低さとそれゆえの就業者の減少を指摘している。
 そして終章のまとめとして『宅配に‘無料配送’はあり得ない』と締めくくり、『アマゾンを始めとする大手通販業者の過度な値引き要求が宅配の現場を疲弊させ業務の品質を劣化させている』と指摘している。欧米と較べれば極端に低価格で高品質な日本の宅配事業だが、それゆえの疲弊が高品質の継続を危うくしている。高品質の継続には低価格の是正が不可欠であり、『ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ!・・・』は宅配現場からの血反吐の声だったのだ。
 2015/11/12 09:22  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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