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独裁体制か幕藩体制か
 一世を風靡した躍進企業も何時かは壁に当たり、業績悪化からリストラを繰り返し、不幸にして破綻に至るケースも少なくない。このギョーカイも例外ではなく、むしろ一般産業界より新陳代謝は速いのではなかろうか。
 優良企業の経営が悪化する引き金が引かれるのは表面化する5年も10年も前の事で、振り返ってみれば、あの時のあの判断が転落の契機となったのだと総括出来ても、その当時は逆に躍進への大英断などと囃し立てられたものだ。このギョーカイの長年の盛衰を見て来た老獪には経営悪化した各企業の転落への転換点はその時点で見えていた事が多く、付き合いの距離感によって直言したり遠回しな説話を流したりしたが、どちらの方法でも聞き入れられた事は少なかった。真理を伝える識者は不吉な予言者として遠ざけられるのが世の常なのだろう。銀盆に首を乗せられた予言者ヨハネや地動説を唱えて宗教裁判で有罪を宣告されたガリレオに較べれば、進化論の唯物論的本質を20年も隠してから世に問うたダーウィンは真の賢人だったのかも知れない。
 それはともかく、社内の見識ある者や外部の識者には致命的失策と喝破される戦略が組織の決定として断行されてしまう要因は組織の政治体制に在る。それは独裁体制と幕藩体制だ。
 独裁体制では異論を挟む者は銃殺されるか収容所に送られる。このギョーカイでも異論者や進言者を悉く放逐して来た独裁者もないでもないが、むしろ封建的幕藩体制で判断を誤ったり隘路に陥った会社の方がはるかに多い。幕藩体制では事業別の論功行賞が会社の方向を決めがちで全体最適が蔑ろになり、勝ち続けている時は良いが負け戦になると投資が次々と焦げ付いて総崩れになる。今のゼッコーチョー企業でも勝ち戦には滅法強いが負け戦では総崩れになる体質の企業が目に付くが、これは旧日本軍と極めて共通している。
 日清日露の戦争から満州事変、太平洋戦争とエスカレートして行った軍国主義の原点は265年も続いた軍事政権たる徳川幕藩体制の士族層を引き摺った明治維新に在る事は明白で、その証拠に維新(内戦だったので論功行賞の土地も金も出せなかった)直後から不平士族層の反乱が続発し、その捌け口に征韓論が台頭して西南戦争を招いた。それが1910年の日韓併合、1932年の満州国建国、1941年の仏印進駐、日米開戦へとエスカレートして行ったのは必然と言うしかない。関東大震災から昭和恐慌と国家が危機的に疲弊して行く中で「貧困と平和」を選択する事も出来たはずだが、現実は「侵略戦争による経済圏拡張」という博打に突き進んでしまった。なんだか失われた20年の果てに東日本大震災、アベノミクスと続く今日と似ているような気がする。
 話がギョーカイから離れてしまったが、企業経営は常に資本と権力闘争の拡張圧力に晒され、採算性の疑わしいギャンブルに突き進みがちだ。それは封建幕藩体制の論功行賞圧力と大差ないだろう。そんな圧力が経営判断を誤らせ、巨額の損失と店舗や人材のリストラを招くとしたら、何だか満州国か太平洋戦争のようだ。その戦争責任はいったい誰が取るのだろうか。
 2015/07/28 09:35  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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