« 前へ | Main | 次へ »
店は負の資産になった
 TSIホールディングスの260店舗に続いてワールドも500店舗の撤退を発表したが、ブランドの廃止や店舗撤収はこれだけで終わりそうもない。売上の低迷と収益の悪化に苦しむアパレル各社の店舗撤収は加速度的に広がるのが必定だからだ。
 『売れない店をなぜ増やすの?』と何度も指摘しなければならないほど、アベノミクス以降のアパレル業界の出店ラッシュは採算を度外視した常軌を逸したものだった。消費増税と調達コスト転嫁の値上げで顧客が離反したのが撤収ラッシュの直接的な引き金とは言え、店舗小売事業が根本的に行き詰まりつつあった事が本質的な要因だ。
 店舗の価値とコストのバランスは00年3月1日、00年6月1日の連続した異変によって崩れ始め、近年のオムニチャネル化の急進で致命的な段階に入ったと指摘したい。
 00年3月1日の異変とは定期借家契約制度の導入、00年6月1日の異変とは大店立地法の施行だ。前者はテナント店舗の営業権に期間を定めた一方で巨額な差し入れ保証金を不要にし、ODMの一般化と相まって‘誰でもSPA時代’をもたらしたが、店舗の資産価値は激減し、運営コストが問われる流動資産と化した。後者は商業施設の営業時間を自由化して延刻ラッシュを招き、店舗要員の二交代制を必然化して全国的販売員不足を状態化し、接客や店舗運営の質が劣化して消化歩留まりの悪化を招いた。それが買う側と売る側の両面からアパレルECを急拡大させた遠因のひとつと見る事も出来よう。
 近年のオムニチャネル化は店舗での購入を選択枝のひとつに追い遣り、ECが毎年二割前後も売上を伸ばす一方で店舗は前年維持も難しく、売上対比の運営コストに至っては店舗とECで倍近く違うという現実を突きつけられるに及び、店舗は経費を垂れ流す負の資産と認識されるに至った。アベノミクスのもたらすインフレが家賃や内装費の高騰を招いた事も店舗の採算性を一段と苦しいものにしている。
 将来性も収益性も望めず負の資産と化した店舗はもはや戦略的負債でしかないから、アパレル各社が店舗網の整理撤収に転じたのは必然の結末だった。オムニチャネル化が急進する今後、店舗網は一段と絞り込まれ、クリック&コレクトの導入やショールームストアへの転換が加速するに違いない。
 2015/05/19 09:46  この記事のURL  /  コメント(0)

コメントする
名前:
Email:
URL:
クッキーに保存
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー リンク


コメント


« 前へ | Main | 次へ »


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ