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ファストファッションの功罪
 リーマンショック(08年9月15日)とほほ同時(08年9月13日)にH&Mが上陸して以降、経済の失速とともにデフレも加速し、ファッション業界は低価格競争の泥沼に陥った感があるが、アベクロミクス以降、円安インフレに転じた今日、その功罪を総括しておきたい。
 まず‘功’はグローバルモードなトレンド商品が‘速く’‘安く’大量に供給されるようになり、価格的に手の出なかった層までモードなトレンド商品を楽しむようになった事で、業界的には次々と濫造される大型商業施設の床を埋める‘大箱’の供給が広がった事が大きかった。
 逆に‘罪’は1)品質の良識が崩れた、2)価格信頼感が崩壊した、業界的には3)デフレが加速して市場が一段と萎縮した、4)売れ筋後追いのODMが蔓延して業界の開発力が一段と低下した、5)開発力でも価格競争力でも劣るローカルのカジュアルチェーンが総崩れになった、6)チープな品を畳み掛けるような値下げで煽って消化する‘大箱’商法が蔓延した、と挙げればきりがない。
 見てくれのデザイン鮮度を訴求して素材や縫製を限界以下に切り下げたファストファッション商品が市場に受け入れられた結果、国内業者もこれまでの‘良識’を捨てた低コスト開発を加速し、市場も品質の劣化に麻痺して品質の‘良識’が崩壊してしまった。しかも品質を落とした分、調達原価率は急ピッチで低下し、SPAなのに百貨店ブランド並みに25%を割り、顧客の品質音痴につけ込むように20%を割り込むチェーンまで出て来た。
 如何に品質音痴な素人と言えども、そこまで落とせば見え見えのチープさに買い気が殺がれ、プロパーで買う客が激減して値下げが繰り返され、「定価」は有名無実と化した。結果、購入単価が低下して市場規模が萎縮し、さらなる価格競争と品質の劣化が繰り返されて来た。
 外資ファストファッションチェーンや国内業者の低価格‘大箱’業態の商法は極めて類似しており、極端な低原価率で調達したチープな商品を値引きで煽って消化して行く「二重価格商法」に他ならない。何ら割安でもない商品を値引きで煽って割安と錯覚させる商法は商人道に悖るのはもちろん、価格信頼感を崩壊させてさらなる値引き競争と掛け値商法を招く悪循環が指摘される。景品表示法第四条第一項第二号「有利誤認表示」違反が強く疑われる商法だが、商業施設デベも何ら抑止せず公取委も消費者庁も摘発に動かないまま顧客を欺く商法が蔓延してしまったのは遺憾と言うしかない。
 値崩れが広がり原価率が切り下げられる中、リスク回避と開発固定費削減を志向して売れ筋後追いのODMが蔓延し、アパレル企業の開発組織が一段と圧縮されて企画・開発職の給与水準も低下し、そんな実情を見てこの業界を志向する人材も激減し、業界の開発力は加速度的に退化してグローバルな競争力も損なわれて行った。
 ファストファッションの功罪を総括すれば罪がはるかに大きく、価格不信感が高まって流通が非効率化し、国内アパレル業界も大きなダメージを受け、国内産地の衰退も加速した。‘クール・ジャパン’の勢いを悪循環を断ち切る転機として欲しいが、業界の開発人材も産地のサプライチェーンも枯渇した今、復活は点か線に限られてしまうのだろうか。
 2015/01/27 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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