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販売員の地位向上
 『ファッション業界の光と影』と言えば、80年代から『ランウェイでスポットライトを浴びるデザイナーとフィッティングルームの影でシャケ弁当をかき込むハウスマヌカン』という図式は基本的に変わらないが、オムニチャネルな今日ではハウスマヌカン(販売員)に物流センターのピッカーを加えるべきかも知れない。そんな関係は欧米のファッション業界も大差ないようで(格差はもっと極端だ)、フィッティングルームの影でサンドイッチやパニーニをぱくつく姿をよく見かけたものだ。
 光の側だったはずのデザイナーとて頂点は80年代で、デフレとともにアパレル企業がアウトソーシングに流れ企画開発スタッフを削減するとともにデザイナーの大半がOEM/ODM業者側に移り、給与水準は見る影もなく低下して行った。80年代には数千万円の年俸を取るデザイナーも珍しくなかったが、今やOEM/ODM業者のデザイナーの給与は販売員と大差ないのではないか。
 販売職の給与とて、人手不足で売り手市場と言われながらも直近の三大都市圏バイト募集平均時給は950円弱で物流・清掃バイトより低い。ショールーム陳列で販売員を物流労働から解放し接客に集中させれば給与水準を伸ばせるが、この業界の経営者はまったく関心を示さない。恐らくはショールーム陳列を導入して成果が上がっても、販売員の待遇に還元する意志はないのだろう。アパレルに限らず流通業の経営者にとって販売員(店舗要員)は低コストに使い捨てる搾取対象でしかなく、店は永遠に「蟹工船」のままだ。
 SCや駅ビルの業界では販売員啓蒙として接客コンテストの類が盛んだが、私には階級搾取の現実を粉飾し待遇改善を先送りする如何わしいイベントとしか映らない。刻々と変化する商品や洗濯に関する知識、フィッティングのトレンドとお直しの知識、オムニチャネルな在庫確認やサービス対応はもちろん、愛想までふりまいてくれるのだから、それで時給千円未満とは非道過ぎる。服飾専門学校から商業施設デベまで業界ぐるみで若者を見果てぬ夢で釣って搾取する悪しき慣習を一掃しない限り、この業界はますます衰退して行くしか無い。もっと深刻な人手不足になって時給が高騰し、店舗運営システムを抜本的に革命せざるを得なくなる事を願うしかないのだろうか。
 2015/01/26 10:04  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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