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企業価値の評価
 当社の仕事のひとつにデューデリゼーション(企業やブランドの買収価値の評価)というのがあるが、PLに見る収益力やBSに見る資産価値やキャッシュフローはもちろんだが、それらは過去の通信簿であって将来を約束するものではない。今後の収益力を予見するには「価値の創造体制」と「価値の実現体制」を見抜く必要がある。
 「価値の創造体制」を評価する一番簡単な方法は商品開発スタッフ(デザイナー/パターンナー/生産管理)の陣容を見る事で、売上を商品開発人員数で除した数字が小さいほど将来のポテンシャルが大きいという事になる。デザイナーにはグラフィックデザイナーやテキスタイルデザイナーも含まれる。粗利益率はロットやロス率で大きく動くので、将来の収益力を担保する指標とはならない。
 「価値の実現体制」は歩留まり率と営業経費率で見る。「歩留まり率」とは実現売上を総投入定価総額で除したもので、プロパーで売れる比率が高いほど100%に近付く。業界の平均値はアパレルで75%前後、リテイラーで80%前後と推察されるが、70%を割ると収益が望めない。
 「営業経費率」は不動産費/人件費/物流費など売上対比の運営コストで、百貨店アパレルでは小売売上対比55%を超えるが、SC/駅ビルアパレルでは40%前後、カジュアルチェーンでは35%前後が一般的だ。EC(自社運営)では売上規模が5億円前後までは店舗販売と大差ないが、10億円を超えれば30%、100億円を超えれば25%、1000億円を超えれば20%を切る。取扱高が1150億円に達するスタートトゥデイ社など18.4%と驚異的な低運営コストを実現しているから、将来の収益力も高く評価される。
 「価値の実現体制」はプロが入って店舗網を再編しオムニチャネルにロジスティクスと在庫コントロール体制、提供方法を革新すれば容易に改善出来るが、「価値の創造体制」は企業/ブランド固有の属人性の高い基盤であり、プロが入っても容易には築けない。バイヤーだけでデザイナーもパターンナーも生産管理もいない小売SPAは「価値の創造体制」が疑わしく、普通借家契約だった前世紀まではともかく定期借家契約が大勢となった今日では店舗の営業権が評価出来ず、値段がつかないのが現実だ。
 企業買収や出資はギャンブルになりがちで、リミテッドが買収したアバクロ株を上場後に売却して40倍、ソフトバンクのアリババに対する出資がNY上場で4000倍になった一方、60億円で買収した109系アパレルが数年で1円になったケースもある。企業価値を算定するには将来の収益力を担保する「価値の創造体制」を正しく評価する事が肝要だ。
 2014/12/19 09:41  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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