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商品企画の基本はシーンの光と大気
 アパレルの商品企画には、時間をかけて素材構成から組み上げる伝統的なコレクション手法から流通素材で単品売れ筋を追うファスト手法まで様々だが、海外生産が96%超という今日では商社のお膳立てした生産背景(素材/工場/パターン)の範囲内で収めたがるブランドが多いのも致し方ないのだろう。
 国内産地が元気でテキスタイラーがリスクを張ってオリジナルの意匠素材を供給していた80年代までは、アパレルが素材から開発しなくてもコレクションを組む事が可能だったが、国内産地が空洞化しテキスタイラーがリスク負担力を失って受注生産が一般化した今日では、早期からテキスタイラーと組んで素材から開発しないとまともなコレクションは組めなくなった。結果として、ある程度の売上スケールがあって開発組織を維持出来る収益力のあるブランド以外は、同質化覚悟で商社のお膳立てに乗るか流通素材によるファストな開発に流れるしかなくなったのが今日の実情だ。
 商社のお膳立てに乗ったり流通素材によるファストな開発に流れるブランドが単品企画になってしまうのは必然だが、テキスタイラーと組んで素材から開発するようなブランドでもオリジナルなスタイリングと素材構成からコレクションを組めるブランドは限られる。きちんと開発するブランドでも単品MDに流れ、シーズンの光と大気と身体との間合いを構想してスタイリングとデリケートな素材構成を組み上げる力量は望むべくもなくなったのは悲しい限りだ。営業サイドのMD要求に流れて前年踏襲アイテムが大半を占めてしまうのか、産地に行かなくなったデザイナーが机上の企画に終始してリアリティを失ったのか、どちらにせよスタイリングではなく単品で売る体質に陥っているブランドばかりに見える。
 もはや古典的な技法なのかも知れないが、アパレル商品企画本来の手順は、来シーズンのシーン/デリバリー別の光と大気、ターゲットのウェアリング・ユーティリティ(着こなし着合わせの気分)を読み、テキスタイル開発の動向とテキスタイラーの読んでいる時代の光と大気を擦り合わせ、ストリートや先端的なコレクションから次シーズンに繋がる‘芽’を見出して(インスタグラムやピンタレストが使える!)培養し、自らのコレクションを組んで行くべきだと思う。
 私はクリエーターではなくマーケッターだが、来シーズンの『MDディレクション』を組む時、必ずこの手順を踏んでいる。クリエーターと違うのは、来シーズンのシーン別の光と大気、ターゲットのウェアリング・ユーティリティを読むのに、勘ではなく、ブランド別売上動向と客層タイプ別のスタイリング変化を毎月追って統計的に解析している事だ。魔術ではなく科学で構想すると言っても、そこには産業革命以来、今日に至る経済・社会・建築・美術・工芸・文芸・素材・服飾の膨大な感性データベースがあってこそで、文学作品や名作フィルムのアーカイブがそこに加わるのは当然だろう。
 今シーズンの『MDディレクション』にも、そんな感性データベースから発想されたスタイリングテーマが幾つか含まれる。メンズの『京都に死す』、レディスの『バルベックの夏』など、時代の光と大気がスタイリングとデリケートな素材構成に反映されていると思う。
 2014/07/29 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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