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欧米コレクションは芸がない?
 早くも来年春夏のメンズコレクションが始まっているが、日々、ウェブで紹介されるランウェイのスタイリングは何れもフィットがシンプルに過ぎ、着崩しの芸がないように見える。
 別に今シーズンに限った事ではないが、メンズに限らずレディスも欧米コレクションシーンのスタイリングはギリシャ/ローマ以来の美意識がそうさせるのか病的な完成度追求がそうさせるのか、ボディとコスチュームの両極に振れるだけで、‘人が服を纏う’という間合いの感覚が欠けている。欧米モードの美意識はあくまで服の完成度と肉体の賛美という作る側の‘クリエイション’に在り、使う側の気分やライフスタイルで ‘身体と衣装の間合いを粧す’という‘ユーティリティ’の芸はほとんど視野にないからなのだろう。
 大正期以降は洋装が定着し戦後は和装が祝祭の場の民族衣装に追いやられて行った我が国だが、モードの欧米志向が強まり欧米ブランド/SPAが氾濫する中も、ストリートな若者たちや洗練された大人たちの着こなしには‘身体と衣装の間合いを粧す’着崩しの技が脈々と生きている。ストリートの若者がぎりぎりまでパンツを緩く落とし履いて意気がるのも、江戸後期の洒落者達が地味な縞や小紋の着物をぎりぎりまで合わせを浅くして‘小股の切れ上がった’着こなしを競ったのに通ずるものが在る。どちらも‘身体と衣装の間合いを粧す’着物文化がもたらす‘ユーティリティ’の芸だと思う。
 そんな事を今思うのは丁度、当社の来春夏『MDディレクション』のスタイリングテーマ設定が大詰めを迎えているからだ。欧米コレクショントレンド以前に、国内の各客層はどんな着回し方・着崩し方を志向しているか正確に掌握しないとトレンド情報を売れるスタイリングとMDに落とせないからだ。今春夏の国内スタイリング変化を見る限り、11年春夏から6シーズン(3年)続いたグローバル&モードシフトが終わり、14年春夏から恐らくは6シーズン続くローカル&ナチュラルシフトが始まったと認識している。そんな来春夏では作る側の‘クリエイション’より使う側の‘ユーティリティ’の比重が高まる。だから欧米コレクションのスタイリングが芸の無いものに見えてしまうのだろう。

  小股の切れ上がった色女(鈴木春信の「夕立」)
 2014/06/23 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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