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24時間戦えますか
 政府の産業競争力会議では高給ホワイトカラーを労働時間規制の適用除外とする「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を検討しているそうだが、実現するにしても何らかの上限規制や一般社員との連携への配慮が必要だと思う。幹部が競って働き仕事のテンションとスピードを上げる事が良い結果をもたらすとは限らないからだ。
 功を焦る幹部間で『24時間戦えますか』が競われれば過労から身体や精神を病む人も出て来るし、育児や介護のハンディを抱えた人を昇進レースから締め出す事にもなりかねない。社内競争が過熱すればペースの異なる人たちとのギャップも拡大して組織の連携が綻び、業務精度が崩れたり戦線を離脱する人も出て来る。幹部が目一杯仕事にのめり込めば視野も狭まるから、思わぬ判断ミスも生じて会社にとってもリスクが高まりかねない。
 『24時間戦えますか』はバブル最盛期の80年代末、三共の「リゲイン」というドリング剤のCMで一世風靡したキャッチフレーズだが、当時は『五時から男』のCMで売り出した中外の「グロンサン強力内服液」など覚せい剤紛い?の効能を謳ったドリンク剤が大流行りで、長時間労働が社会的な問題になる事もなく「ブラック企業」という言葉もなかった。
 そんな習慣は太平洋戦争直前の昭和16年頃から在り、大日本製薬の「ヒロポン」や武田の「ゼドリン」など‘覚醒剤’として公然と売られ、疲労回復や眠気防止、気分高揚や暗視力向上を目的に軍需工場や軍隊で広く活用された(いわゆる突撃錠/猫目錠)。日本に限らず、大戦中のドイツやイギリスでも使われたという。それが敗戦とともに一般に流れて濫用され中毒患者が広がって社会問題となり、1951年の「覚せい剤取締法」の施行に繋がった。
 覚醒効果は薬物だけではない。組織のテンションを高めるべく朝礼などで声高に一斉唱和したり、びっくりするぐらい大声で挨拶を交わすなど、どこの会社でも大なり小なり見られる戦意高揚策だ。会社によってはそれが嵩じて始終、ハイテンションを強要する雰囲気が定着し、長時間労働の要因になったりもする。「ブラック企業」と後ろ指さされる会社はきっと、そんな覚醒状態で走っているのだろう。お通夜みたいにローテンションなのも困るが、異様なハイテンションを保つのも無理が在るのではないか。
 そこまではともかく、始終ハイテンションに組織を回すため不要な仕事を創造する会社が少なくないのには驚かされる。煩雑な会議体系や交錯した業務、様々な営業イベントや自己啓発研修を見ていると、本末転倒な覚醒ゲームではないかと疑いたくなる。「ホワイトカラー・エグゼンプション」など無闇に導入して覚醒ゲームを過熱させ組織を疲弊させるより、‘労働の質’という視点から全社の業務体系とビジネスモデルを見直す方が先だと思う。
 2014/05/30 10:16  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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